心当たり

 太陽神様のご威光の一部をお使いになれたら選ばれし御子。

 僕が修道服に身を包んだ女性が探しているというのはそんな立派な人であった。


「そもそもとして、それだけ立派な力を持っている人がこんなクソみたいなスラムにいるわけがないじゃない」


「そぉーだよね」


 心当たりない?などと言われても、僕もレーヌもまったくもって心当たりなどない。あるわけがなかった。

 だって、普通は能力があればこんなスラムを飛び出していくだろう。


「……どうしても、思いつきませんか?」


「「……うーん」」


 どれだけ言われても、僕とレーヌは二人して首をかしげることしか……。


「あっ!でも、心当たりのある人がいるかも!」


 いや、一人だけありそうな可能性があるではないか。


「何かありましたか!?」


「ほら、以前。スラムの餓鬼が貴族様にお前は才能があるとか見込まれて出て行ったことあったじゃん。あれじゃない?」


「あぁ、確かにそんなことあったわね」


 僕の言葉にレーヌが頷く。

 かつては、そんなこともあったのである。スラムから貴族様に認められ、この掃きだめから脱出したという一報はかなりこちら側の人間の価値観を揺るがした一件だ。

 

「お、おぉ!それかもしれません!身分的な問題がありながら、それでも上に登用されたというのはかなりデカいように思えますね!」


「でしょう?」


 強く反応する修道服に身を包んだ女性。


「……でも、そいつってばそんなに強かったかしら?」


 それに対して、レーヌは懐疑的な態度を見せる。

 まぁ、それもそうだろう。以前、僕たち二人はそいつから因縁をつけられ、そのままボコボコにした過去がある。

 その時はこれっぽちも強いとは思わなかった。


「多分、その時は力を隠していたんだよ」


「……泣きながら土下座していた記憶もあるけど」


「それも含めての演技なんじゃない?天才にしか見えない何かしらの思惑があったのかもしれない」


「そうかも、そうなのかも?」


「そうだって!」


「なら、そうかも」


 僕とレーヌは互いに意見をすり合わせる。


「ということで、多分お求めの存在はそいつですね」


 そして、結論を修道服に身を包んだ女性へと伝える。


「……むむぅ。たどしたら、既に別の人間の勢力圏に囚われているということになってしまうのですか」


「いや、彼は男爵の娘に連れていかれたので、権力次第ではどうにかなるんじゃないですか?多分ですけど」


「……なるほど。確かに、そうかもしれませんわね。それではお二人とも。その方について詳しく教えてくれませんか?」


 修道服に身を包んだ女性は僕たちへと疑問の言葉を投げかけてくるのだった。

 

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