人影
太陽に御座す神を信奉するアイトリア教。
そこに激震が走ったのは今よりも十年も前の話である。
まず、その激震の一つは呪われていたはずの王女がその呪いを克服したこと。
そして、もう一つはとある一つの存在を観測したことだ。
「……」
十年。
たったの十年だ、それだけの時間によってアイトリア教の方針は大きく変わっていた。
これまであまり表に出てきていなかったものたちが表へと顔を見せ、激震地を手にしようと暗躍を開始している。
「太陽の意思を継し御方。太陽神様の力にしか興味ない個人派なんぞに渡すわけにはいきません……必ずや私が」
そんな中で、アイトリア教を信奉する一人の少女がスラム街へとやってきた。
「わ、我々の掴んだ情報によれば、太陽神様の御力を使った個人がここに暮らしているはずなのですがぁ」
その少女は非常に不衛生で、道端に死体も転がっているような中をおっかなびっくりな足取りで進んでいく。
「ど、どこまでも人類は堕落するばかりですね。うぅ、なんと不甲斐ないばかりか。太陽神様さえ健在なれば世界の余すところに光を届けたというのに」
そんな彼女が漏らす言葉は自分への失望と過去への羨望だ。
「私は太陽派の主なのです。こんなところで臆しているわけにはいきません」
実に綺麗で美しい、新品同然の修道服を身にまとう少女は意を決して力強い足取りでスラムの中を進んでいく。
すべては自分の目的のために。
「おいおい、随分と金を持っていそうじゃねぇか。少しばかり貧しい俺たちに恵んでいってくれや」
「金だけじゃなくて、その柔肌の方も分けて欲しいね」
そして、
「ふ、ふぇぇぇ!?」
当然のように厳ついスラムのごろつきたちへと絡まれる結果となっていた。
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