第8話
正樹が姫を駅まで迎えにいくと言うので(貴美子ちゃんというらしい。ちくしょう。名前まで可憐だ)、留守番を仰せつかった俺は、一服するかとベランダに出た。
が、干されている正樹の大切なばあちゃんのこたつ布団に臭いがついちゃ悪いなと、取り出したセッタを尻ポケットにねじ込み、大きくひとつ深呼吸をして煙の代わりに晴れた日の空気を肺に入れた。
ふと、目の端に赤いモノがよぎった。
いつの間にか、こたつ女が俺の横に立っていた。
その顔は、初めて見る笑顔だった。
「なんだ、こたつから出れんじゃねぇかよ。気持ちイイだろ、外の方が」
図らずも魅力的なその笑顔に、動揺した本心を隠して軽口を叩いてみるが、女は笑顔のまま
「ありがとう。正樹を助けてくれて」
そう言った。
なるほど。何でもお見通しという訳か。
「あんた、一体アイツのなんなんだよ」
素朴な疑問を投げ掛けると、女は切れ長の目を更に細め
「……孫を、よろしくね」
そう言い残して、消えた。
なんと、こたつ女は正樹のばあちゃんだった。
世の中まったく、たまげる事ばかりだ。
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