第5話
こたつ女の存在にひるむことなく、それからも俺は暇を見つけては正樹の部屋を訪れた。
女のせいで正樹の体調や精神がおかしくなったりしていないかが気がかりだったのもあるが、何より「こたつ」のある暮らしが快適すぎたのが本音だ。
時折こたつの中から鋭い視線を感じたり、足を引っ掻かれたりもしたけれど「こたつライフ」と引き換えだったら全く大した問題ではなかった。
気の強い女は嫌いじゃないし、ぶっちゃけ「こたつ女」はなかなかに色っぽくて好みのタイプだったし。
「最近『ミケ』はどうよ」
「『タマ』だよ。うーん、あんまり感じなくなっちゃったんだよね」
半月ほど経った頃カマをかけてみると、女は正樹には接触しなくなったようだった。
「ばあちゃんの所に、行けたんならいいな」
俺には毎回のように、ちょっかいを出してくるのに。あの女ときたら、正樹を構うよりも俺の監視に忙しいようだ。そんなに俺が悪事を働きそうに見えるのか? あの女、人を見た目で判断するタイプか? 生意気な。
そろそろ冬も終わりに近づき春の気配を感じ始め、そういやこたつを片付けたらあの女はどうなるんだろうななどと考えていた頃──、
事件は起きた。
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