ようやく
時が進むことしばらく。
ペークシスが最愛の妹であるレイシアが大っ嫌いと言われてから早いことでもう三年も経過した。
この時間はゼーアとノービアを十二歳まで成長させ、レイシアを十六歳という立派なレディーと言える年齢にまで引き上げた。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」
この三年間。
ペークシスは常に胃薬を手放せない状況になっていた。
会えないからこそ、ノービアの中で積もっていくゼーアへの強い気持ちとそれに伴って年々きつくなっていく愛人候補の筆頭に上がっているペークシスへの圧。
自分がどれだけ成長してもおっぱいが大きくなっても全然欲情してくれないと不満に思うレイシアと、八つ当たり気味に高まっていくペークシスへの嫉妬心。
それらを一心に浴びる行き遅れ女であるペークシスはもう泣きそうだった。
「それも、今日までだ……」
だけど、そんな束縛からは解放される。
12歳。
それは非常に大きな年齢である。
この年になるとキーリア王国の全ての貴族の子女がオーリア学園へと通うことになっているのだ。
そして、聖女であるノービアもその学園に留学生として通うことが決まっている。
これで今まではほとんど交流の持てなかったゼーアとノービアの関係も変わってくれるだろう。
これでペークシスへと向けられるノービアからの圧力は減るだろうし、学園に通って多くの女の子と触れあう中でゼーアも色恋を学んでもらえば、いずれ自分のことなどではなくもっと自分と釣り合った年齢の女の子の方を愛人とするであろう。
具体的にはレイシアを。
「ふふっ」
もうペークシスは一人、すべての胃痛から解放された気分でいた。
これで常に圧迫面接をされているかのようなノービアとの仲も、ちょっとだけギスギスすることもたまにあるレイシアとの仲も、完全なるものに戻る。
彼女はそう心の底から信じていた。
「なぁ、ペークシス」
そんなペークシスへと近づく人影が一つ。
「何かしら?」
彼女に近づくのは十二歳へと成長し、そこに幼さを残しながらも美しく成長したゼーアである。
「お前、僕の愛人になってくれない?」
ペークシスへとゼーアが告げる言葉、
それは初めて、彼が正式に彼女へと告げる愛人にならないかどうかを尋ねる打診であった。
「……はへっ?」
「「……はっ?」」
ペークシスじゃ知り得ないことではあるが。
ゼーアには16歳まで生きてきた前世があり、精神年齢換算をすると現在28歳。
彼にとって、十代の少女たちに手を出すことは罪悪感となり、二十代後半の行き遅れペークシスにこそ、親近感を感じる年齢であることなど、ペークシスには知る由もなかった。
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