愛人
僕の隣で首をかしげているレイシア。
だが、彼女はそのまま動かなくなってしまったので僕はレイシアを無視して仕事を開始する。
というよりはノービアたんの悲劇落ちフラグを打ち砕くための。
「……やはりやるべきは宗教権力の権威を落とすこと」
まずは教国を落とすところからになるだろう。
ノービアたんを縛っているのは、結局のところ巨大な宗教勢力そのものなのだから、すべてはそこの権威を落とすところからになるだろう。
「まぁ、そこらへんはゆっくりと落としておけばいいか。今は正教に反発する組織であるプロテスタントたちを支援する程度に留めておこう」
僕はサクッと終わる仕事をどんどん進めていきながら、ノービアたんとの悲劇落ちフラグを壊すための策略を建てていく。
「それよりもまずは愛人を探すところからではないでしょうか?愛人を孕ませておけば当面の問題も解決するでしょう?」
これまで、行動を停止させていたレイシアが再び動き出し、僕への疑問の声をぶつけてくる。
ちなみにレイシアには僕の目的を軽く教えてある。
ノービアたんについては語らず、正教内部に干渉したいものがあり、それへと干渉出来るようになるために色々動いていると言った感じで。
「確かにそうかもだけど、現実的な解決法がないからな。ペークシスを引き込もうにもあいつはガッツリ教会の関係者だし、そもそも引き抜けるような人材じゃないからな……条件面でいればこちらが土下座で頼みこみたいくらい完璧なんだけど」
「……」
「まぁ、放置だな。そもそもとして自分が死ぬことのことなんて想像したくないし、死んだらその時だわな」
僕が死んだら、そのあとのことなんて知ったこっちゃなしだな!
別にアウトーレ侯爵家に僕は特別な愛着を持っていたりするわけでもないし、滅びるなら滅びてもらっても全然かまわない。
僕は全く気にしない。
「わ、私……なんてどうですか?!」
そんなことを考えている僕に対して、レイシアが手を上げて立候補してくる……僕よりも二から三歳年上であるだけの彼女が。
「ん?レイシア?」
「そ、そうです!私なら教会もそんなに重要視していないですし、既にゼーア様の手の中にいます。それにもう産めます!子供くらい!」
そして、そのまま僕に向かって……あぁ、そういえば。確かレイシアもレイシアでずっと病弱であったがゆえに姉を縛っているという負い目に加えて、周りから軽んじらえて扱われてきたという辛い過去があり、自己肯定感が死んでいるんだったな。
「ん?流石にレイシアはまだ無理でしょ。そんな風に自分の存在をアピールしなくとも、僕が君を捨てることはないから安心していいよ」
そんなに心配せずとも僕がレイシアを捨てることはないだろう。
ペークシスと敵対なんてしたくないしね。
「いや……その、うっ」
僕は自分でも産めるなどと豪語するレイシアの言葉を彼女の自己肯定感の低さによる不満の結露として処理し、仕事へと戻るのであった。
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