皇太子成人記念式典
ペークシスとレイシアの二人を自分の配下たちに任せている中。
僕はアウトーレ侯爵家の当主として皇太子成人記念式典へと参列していた。
「みんなが見守ってくれていたおかげで、私はここまで成長することが出来た。みんなには感謝するばかりである」
キーリア王国。
それは非常に長い歴史を持った伝統的な王国であると共に、広大な領地に多くの産業、作物の育ちやすい優れたる土壌を持った確固たる大国である。
長い年月、大国として君臨し続け、多くの戦争も経験しながら今もなお大国としての地位を維持し続ける大国こそがキーリア王国だ。
そんな大国たるキーリア王国ではあるが、数百年も続く歴史があれば突然暗黒時代があるものである。
そして、今。キーリア王国はそんな時代へと片足を突っ込んでいる状況である。
ここ最近のキーリア王国は頻発する自然災害や人類の敵としてこの世界に巣喰らう魔物たちの異常発生。干ばつによる飢饉など。
数多くの異常事態によって国が揺れている最中にもある。
そんなキーリア王国の王都、アネーロでは今。
皇太子成人記念式典が起こなわれている最中であり、国を挙げての御祝い事となっていた。
最近のキーリア王国に漂う閉塞感を打ち破るかのような熱い御祝い事へと。
「振り返ってみれば。私の足取りは常に困難の連続でした。幼少期であっても、そこから成長した少年期であっても、私の前には数多くの試練が立ちふさがってまいりました。そして、それらを一歩一歩、踏み越えたからこそ今の私があります」
もう既に昼間の時間に、民衆の前に顔を出し終えている皇太子殿下は今。
空に月が登っているような時間における王都のパーティー会場で演説をしている最中であった。
「まだまだ若輩者である私だが、ぜひともみんなにはこれからも私のことを支えて行ってほしい」
この場にいるものは各家の当主や王族、それとごく一部の選ばれた熟練の騎士たちだけである。
当然、若者……ましてや、未成人なんて僕しかいない。
僕を除いたときの最年少が皇太子殿下となる年齢層の高さである。
そんなパーティー会場で、自分がここまで大きくなれたことに感謝の言葉を口にする皇太子殿下の感動的な演説はごく自然なものではある。
だけど、まったくもって自分には響いてこなかった。
当然だ。僕はまだ八歳……皇太子殿下をこれまで支えてきたつもりなど毛頭ないのだから。
「……」
それでも、周りにいる曲者揃いの各家の当主たちの圧は理解出来る。
多くの経験を積み重ねてきた歴戦の猛者たち。
そんな人たちの、立ち振る舞いから自然と漏れ出ている雰囲気だけで圧迫されるような錯覚を覚える。
あぁ、でも。
そんな人達を相手に僕はこれから一つの貴族家の当主として立ち回るばかりか、ノービアたんのために大立ち回りをしなければならないのだ。
こんなところで臆している暇など僕にはこれっぽちもない。
「……っし」
皇太子成人記念式典という大きな場の空気に触発される僕は改めて、自分へと活を入れるのだった。
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