火種
ノービアたんを始めとする正教の勢力が自身のお膝元とである教国へと帰ってから早いことで一週間。
「責任問題にはならずに済んだか?」
色々とバタバタしている王都へと再び、ペークシスがやっていた。
「私の職務は聖女様の護衛だったからな。あまり私の責任問題にはならなかった。襲撃が起こると共に私は自分の妹の元から離れて護衛対象である聖女様の元に戻っていることにもなっていたし」
「それは上々」
僕は彼女の答えを聞いて満足げに頷く。
「……これを言ってはいいものか」
「ん?」
その後に、ぼそりと呟かれたペークシスの言葉に僕は首をかしげる。
「いや、そうだな。私は今、とりあえず連れ去られた妹を探すためという名目でこちらへとやってきている」
だが、ペークシスはさりげなくそれを誤魔化して自分の目的を話す。
「うん。そうだね。あぁ、ごめんね。早く、妹に会いたいか」
「……いや、そういう……そういうことだ!」
「……うん」
僕は何処か、歯切れの悪いペークシスの態度に首をかしげながらも、部下へとレイさを呼びつけるよう命令する。
「ボス、お連れしました」
「ご苦労」
少しも待てば部下が戻ってくる。
「し、失礼しましゅ!」
そして、そんな部下に続いて、ガチガチに緊張した様子を見せるレイシアが何とも微笑ましい嚙み方をしながらこの場へとやってくる。
「……良かった」
そんな無事なレイシアを見て、ペークシスが安堵の声を漏らす。
「お前も下がっていいぞ」
僕は立ち上がりながら、部下にも下がるよう命令する。
「僕も僕で皇太子様成人記念式典に向けて少しばかり忙しいんだよね。後はお二人さんで仲良くしておいてくれ……一応言うけど、逃げないでね?気を使って監視もつけずに二人にしてあげるのだから」
そして、そのまま僕もこの場から立ち去って、中に二人だけの状態を作るのだった。
■■■■■
ゼーアが離れた後、この場に残るのはペークシスとレイシアの二人だけである。
「……ねぇ、お姉ちゃん」
二人だけの空間となった中で、いの一番にレイシアが口を開く。
「ん?何?」
「……ちょ、ちょっとだけまずは聞きたいことがあってね?」
「何かな?」
色々と考えたいことがある。
だけど、まずは自分の最愛の妹がこうして無事でいてくれているという喜びを噛みしめているペークシスはレイシアの言葉に耳を傾けることの集中する。
「わ、私でもゼーア様の愛人、になれたりするかなぁ?貴族様は、愛人を囲むのが普通なんでしょ?」
そんなペークシスに対して。
レイシアは自分の首へとそっと手を当て、笑顔と共に疑問の声を漏らす。
「……えっ?」
それに対して、ペークシスはどんな反応をするべきであったのだろうか?
自分の妹が浮かべている。
少しばかり危険とも言える性愛と色恋に染まった表情を前にペークシスはこれ以上ないほどの衝撃と焦燥を受けるのだった。
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