パーティー

 皇太子様成人記念式典の前に行われるパーティー。

 王城の一角にあるパーティー会場で僕を含め、多くの有力者たちが集まって賑わっていた。

 そんな中で、齢八歳。

 圧倒的最年少当主としてこの場に立つ僕は多くの貴族たちから囲まれていた。


「やぁやぁ、これはアウトーレ侯爵閣下。どうも初めまして」


「えぇ、お初にお目にかかります。レイブルク侯爵閣下」


「君が当主になったと聞いて驚いたとも。覚えていないだろうが、君が二歳の頃。私も君に会っているのだよ。まさかその子がこんなにも早く当主になるとは思わなかった。何か困ったことがあればいつでも私を頼ってくれ」


「ご厚意感謝致しますが、今のところ両親が残してくださった部下たちが優秀でして。あまり困っていないですね。自分の両親には感謝するばかりです」


「おぉ!それは良かった。流石は君の両親だ。本当に、惜しい人をなくしたよ。良き当主であり、良き同志であった」


「私も早く追いつけるように邁進していく所存です。至らぬところもあるかもしれませんが、見守っていただけると幸いです」


「あぁ、もちろんだとも。それでは私は別の方と話に行こう。君と話して本当に、良かった」


「それならばうれしいです」


「お時間よろしいですかな?アウトーレ侯爵閣下。お久しぶりにございます。私です。ハレル子爵家の当主、ロイド・ハレルにございます」


「おや、ハレル子爵閣下。お会いするのは自分の六歳の誕生パーティーの時以来でしたね。お久しぶりです」


「えぇ。そうにございます。まさか、あれから二年。あの小さかった子がこんなにも早く当主になるとは想像もしておりませんでした。ここまで早く幼君から確固たる当主としての地位を手にする者は貴方くらいでしょう」


「いやいや、自分も思っておりませんでしたよ」


「両親が亡くなれたのは貴方が二歳の頃でしたか。よくぞここまで無事に育ってきた者です」


「自分の部下が優秀でして」


 僕は若輩者。

 相手をたて、丁寧な対応を心掛けながらも、相手に何の口約束も結ばせない。

 若いが故に侮られ、こちらが強気に出れば相手に反感を与えてしまう。

 これに対抗するのは不可能である。僕には実績がないのだから。

 ゆえに、付け入らせないように壁を作るのがこの場における僕の最善になる。

 そんな意思の元、僕は大量の貴族たちと会話を交わしていく。


「ふぅー」


 自分の元にやってきた多くの貴族の言葉をのらりくらりとやり過ごしていった僕はようやく、自分に押し寄せていた人の流れが切れたことで一息つく。

 ここからは僕もあいさつ回りをしていくような時間。


「……」


 そんな中で、僕が真っ先に向かうのはこの場にいる己の推し。

 多くの宗教関連者に囲まれており、あまり身動きが取れていない様子のないノービアたんである。


「失礼します」


 ふぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 リアルの推しだ!肌キレー!髪キレー!目キレー!

 もう、すっごい、本当にすっごい!何もかもがキラキラして見える!なんと、なんとなんとすごいっ!

 マジで、えぇぇぇぇぇぇええええええええええええ!

 現実に推しがいるよぉ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええん。


「楽しんでおられますか?」


「えっ……?」


 内心の動揺。

 それを完璧なまでのポーカーフェイスで隠しながら僕は子供の小さな体を最大限生かしてノービアたんに話しかけるのだった。

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