観察

夏休みに入った。


トラウマになってプールには行ってない。


夏休みが明けた後学校にも行きたくない。


完全に病んでしまったのだ。


明らかに気分が落ちた僕を両親はとても心配した。


パパとママには何も言っていないが、パパもママも聞いてこようとはしなかった。


元気が出るような提案をいろいろしてくれた。


が、あいにく趣味があるわけでも、他に興味があるわけでもない僕には何も刺さらなかった。


お盆前、家族で動物園に行くことになった。


全然乗り気じゃないが、両親は無理矢理テンションを上げ、無理矢理僕を連れ出した。


動物園は学校のもっと向こう側にある。


動物園は意外と楽しかった。



ふれあいコーナーは最高だった。


カピバラを初めて触った。


ハシビロコウの羽も初めて触った。


最後にナイトサファリを楽しんだ。


ナイトサファリも初めてだった。


あのワクワク感は僕を正気に戻した。


キリン、ゾウ、シマウマ、サイ、ヘラジカ、そしてライオン。


柵があるとはいえ、ライオンをあんな間近でみたのは初めてだった。


帰りの車で、両親は満足げな顔だった。


こんなに元気な僕の顔は久しぶりに見たんだろうな。


「おとうさん、おかあさん、今日はありがとう」


うとうとしながら今日のことを思い出す。


カピバラ、ミーヤキャット、レッサーパンダ、ハシビロコウ、キリン、シマウマ、ヘラジカ、ヘラジカ、ヘラジカ、ヘラジカ。


翌朝、両親に元気な顔をみせ、玄関まで送り届けた。


今日はパパもママも仕事なのだ。


トーストを食べながら考える。


明らかに自分の中で引っ掛かっている。


ヘラジカだ。


おかしいんだ、あの動物園。


ヘラジカって寒い地域に住む動物。


ナイトサファリに適してないはず。


もしかしてヘラジカじゃないのか?


暗かったからよく見えなかった。


あんな特徴的なツノなんだ。


てっきりヘラジカかと勘違いしてしまったよ。


図書館に行って調べてみよう。

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