休日

休みは最高だね。今日はそうでもないけど。


だって家のそばで工事してんだもーん。


ママの提案で,図書館に行くことにした。少しは勉強がはかどると思った。


学校の勉強はだいたい理解してるから,知識を深めるっていう意味の勉強ね。


図鑑とか雑学とか結構好き。サクラ味のグミも好き。コーヒーは飲めない。タバコ吸ってみたい。そういえば田中先生吸ってたな。

あ,ついた。


あんま来ないけど来たことはあるし嫌いじゃない。


昔からある図書館みたいだけど,内装はまあまあ複雑。複雑っていうかいびつ。


つい本を読んでしまいたくなる。でっかい本はだいたい写真が多いから手にとっちゃう。

 

「hふぇうをあわ」


まったくっざけやがって。昆虫図鑑だった。もっとわかりやすい表紙にしろよ。


てか,昆虫図鑑でもないなぁ。虫図鑑だ蜘蛛も百足もデカデカと細かく写真で載っている。

あーやなものみた。


ここなんだろう。地域の文献のようだ。こんな一ミリも興味をくすぐらないジャンルなのに,何か惹かれるぞ。


多分ここのスタッフがうまいんだろうな。装飾とか凝ってる感じする。


実は僕が住んでるこの地域,あまり詳しく知らなかったんだよなー。パパとママとぼくらしか僕の家にはいないし。ご近所もそこまで交流が深いわけじゃない。


読みづらいなー。明らかに古い文字で書かれている。全然面白くない。


  『ドン』  


手から滑り落ちた感じはなかったが落としてしまった。


静かな図書館ではその音は響き渡らず,鈍い音だけが僕の鼓膜を揺さぶった。


本をひっくり返すとでかい絵のページで落ちたらしい。


すごい絵だ。どこかで見たことがある。


その絵はこの地域の神を描いたものらしい。


おかしなみため。おもしろいみためなんだ。


ちょっとクスってくる感じ。


あー思い出したよ。


引っ越して初めて初詣に行ったんだ。


この地域で初詣行くなら大体あの神社だね。


家から学校に行く道の逆の方向にその神社はある。


当時全然興味なかったんだけど。


参拝の時ちょうど御神体が見えたんだ。


僕より大きい大人は見えないだろうし、僕より小さい子にだって見えない。


僕の身長はその時ベストだった。隙間から見えたんだよ。


その時の笑いのこみ上がり方がまるで一緒だったから思い出した。


動物の見た目なんだけど二足歩行。四足歩行の動物が二本の足で立っている。強いていうならヘラジカだな。


その神様は、ヘラジカのように立派なツノがある。


けど変な体型。


胸からお腹にかけて太ってる部分と痩せてる部分が交互にある。...つまり滑稽な姿なんだよ。


顔も歪んで見える。人の顔みたい。


絵でじっくりみてみるとやはりおもしろいな。


けどあまりに不気味すぎる。


こんな生物見たことないもんだからね。


元あった場所に、背中側から戻した。


その日はウミウシ図鑑を吟味して満足して帰った。




家帰るともうパパとママがいた。


パパはまあまあいい仕事に就いてるっぽい。そこらへんの人に聞いてみても知ってるような企業の社員。


ママはヘルパーさんのお手伝いにたまに行ってるが,ほぼ専業主婦。


いい両親だ。


遊園地には行ったことはない。だが動物園と水族館はめっちゃ行く。


家族全員,絶叫系は得意じゃないんだ。


まあ僕は一回も乗ったことないから乗ってみたら案外楽しいかもしれないとは思うが,動物園や水族館の方が両親も乗り気だし僕もそっちがいいから不満はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る