第23話 国見青音 15歳 ―これは恋?これが恋?②―

 夕方には久しぶりに大月さんと二人きりで会えるということで、どこか落ち着かないまま6時限目の授業も終わり、部活の時間となった。


 矢を射っている最中もいまいち集中できず、矢は的を大きく外れあちこちに散っている。


「おい、国見!雑念!集中しろ!」


 雑念の混じりまくっている俺の姿を見て先輩が注意をしてくるが、今の俺には弓道に集中している精神的余裕はない。自分でも意外なほど心ここにあらずな状態に陥っている。


 顧問が会議でいないおかげで、予想通り部活はいつもより早めに終わった。


「国見、今日は調子悪すぎだろ。一本も的に当たってないぞ」


 道着から制服に着替えながら同級生が言ってくるが、残念ながらかまってやる時間はない。


「そうだったかもな。それじゃ、お疲れ!」


「おい、もう帰るのかよ!」


 背後から声が聞こえたが、振り返らずに自転車に乗り、風のように、いや光のようにオレンジ色に染まる空の下を突き抜けていく。


 15分ほど全速力でペダルをこぎ続け、小学校に到着するとまだ大月さんの姿はなかった。ケータイを確認すると17:57と表示されていて、2、3分前に大月さんからメールが届いていた。



[国見君はもう着いているかな?私は18時ぴったりくらいになりそう]



 大月さんの移動手段はわからないが、ここから高校までかなり距離が離れているため、おそらく自転車ではなくバスで移動するのだろう。



[俺も今着いたとこだよ。気をつけて来て。]



 返信して顔を上げると、小学校の駐車場の向こうに小走りで走る大月さんの姿が見えた。こちらに近づいてきて姿がはっきりしてくるにつれて、胸が高鳴ってくる。


「ごめん、お待たせ」


 少し息を切らしながら大月さんが言った。


「全然大丈夫だよ。俺も今着いたばかりだから」


 少し緊張していたが、中学1年のときのバレンタインデーに比べればだいぶ落ち着いている。


 大月さんは相変わらずショートカットだが、高校の制服を着ているせいなのか、少し大人びて見えた。

 対する俺はどんなふうに見えているのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る