「エラベナイヨー!!」
「ヒトツダケナンテエラべナイヨー!」
入学式から2日後。朝礼終了後、私はついつい叫んでしまう。クラスが2.5 秒くらい沈黙に支配されて、かなり気まずい。彼ら?いいや彼女らは、やっぱり私と永遠ちゃんとを見比べて、首を傾傾げたり、何かをヒソヒソ言い合っていたりする。
「悩ましいよね~!分かる、分かるよ!」隣の席にいる永遠ちゃんがうんうんと頷いている。
「選択科目、ドレニシタライイカワカラナイヨ~!」
私はまたついつい叫んでしまう。今度はさっきよりも長くクラスが7.5 秒くらい沈黙に支配されてさっきよりさらに気まずい。
「選択科目……どれもやりたい……やりたいよ……」
音楽と芸術(絵を描いたり、陶芸をしたり)、書道から一つを選ばなきゃいけない。どれもやりたすぎてたまらない。
「やっぱり莉子さんは音楽にしたらいいんじゃないかな?」と提案をしてくれたのは、前の席に座る菅原さん。学問の神様のまつ……ではないと思うけど、聞いた話によれば、中学時代、全国模試で全国2位をとっていたのだとか。
「莉子さんはこの前行われた作詞コンテストでグランプリをとっていたじゃない?」
「まぁ、そうね……ってなんで知ってるの!?」
「たまたま、かな?私、莉子さんの作ったあれ、とても好きだよ~!」
「こんな近くにファンになってくれた子がいたなんてびっくりだよ~!ありがとね!」
実は去年の初秋頃、自分の作った歌詞をとある有名な作詞コンテストに出してみた。すると、なんとグランプリを受賞し、曲としてとあるアーティストさんに提供することになった。たまに打ち合わせをしたりする。一応報道されてはいたけど、あんまり話題にすらなっていなかったのに。本当になんで知ってるの?
「やはり、芸術を選択されたらどうでしょうか?鈴原さんは、絵が上手だと高月さんからお聞きしました。なんでも、砂浜に愛らしく秀麗な絵を描いたりされているとか。」と今度は斜め前の席に座っている
「へ?……はっ!?永遠ちゃんっ!」
「あはは~!いつかは莉子の絵のうまさはみんなに知られるだろうし別にいいかなって」
「そういう問題じゃないの!単純に恥ずかしいのよ!」
「落ち着いて、どうどう……どうどう……」
「ウマじゃない!」
「じゃあウマのむす……」
「それも違う!」
そんな私たちを菅原さんは笑みを浮かべて、奏ヶ咲さんは何かを見定めるような目で見ていた。
「やっぱりお二人は双子……」
「違うっ!」
「ピギャアッ!」ピギャアッ?奏ヶ咲さんがよく分からない奇声を?まぁいいや。
「最近会った赤の他人!だから違う!分かりましたか?」
「生き別れなんですよね?」
「だーかーら!違うから~!も~!」
私に妹はいない……はず。知らないけど。知る術はないけど。
もし、記憶を失う前の私に妹がいたなら、今、その子は何をして……って仮定の話をしても仕方ないよね。
今を生きよう。ただ。
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