双子>連絡先?

 4月に入って数日たったある日、桜の花びらが春の香りを運んでくる中、私たちは高校生活という新しいスタートを切る。学校の教室の窓からは、青く澄んだ太平洋がよく見えて、これからも様々な姿を見せてくれそう。そして、なんだかんだ、永遠ちゃんとは同じクラスになった。偶然か必然かは分からないけど、席も隣同士になった。名簿順でどの学校も最初は座らせるだろうから、これは多分必然のことだったのだと思う。



 入学式は、多分みんな一度は感じたことがあるはずの、校長先生や来賓の紹介や挨拶、PTA会長の挨拶もそこまで長くはなく終始スムーズに進んで終わった。それは多分、そこまで生徒数が多くないこの学校だからこそされることなのだと思う。


 諸々の式が終わって教室に帰ってくると、クラスメイトは互いに自己紹介したり、連絡先を交換したりSNSアカウントの交換なんかをしだした。当然、そこそこに人数しかいないのにも関わらず、教室内が騒がしくなる。人見知りをする子は私のクラスにはいなくて、もちろん、私の元にもそういう人はやってきてくれるんだけど、真っ先に私に声をかけてきたのは、やっぱり永遠だった。当然といえば当然か。

「莉子~!連絡先ちょ~だい」

「いいよ~」永遠ちゃんは私の連絡先を入手すると、満面の笑みを浮かべた。その様は少し大げさな気もしたけどまあいいか。

しばらくすると、私と永遠ちゃんの顔に気づいた生徒たちがわらわら集まってきて、私たちの顔を見比べ始めた。

「鈴原さんと高月さんってもしかして双子?」

「連絡先ください!」

「生き別れみたいな感じ?どっちが姉?」と、ある程度自分の中でこうなる展開を予想していたけど、やっぱり聞かれたな~。

 隣にいる永遠ちゃんを見ると、なぜか少し嬉しそうにしている。えっと……?なんで?結局、私は連絡先を諸々の人と交換をし、双子説についてはバッサリ否定した。

図らずもクラスの注目の人たちになってしまった私たち。今後に少しだけ不安が残る。


 家に帰ってきて、また砂浜に鯨や音符の絵を木の枝で書いていると、声をかけられた。

「やっほ~莉子!」

「永遠ちゃんっ!!」

「なんとなくいるかなーと思って来て見たらやっぱりいた!」

「あはは……」お願いだから絵は見ないで~と思っていたのだけどあっさりその願いはむなしいものになってしまった。

「相変わらず莉子は絵がうまいね~」

「……なっ?なにいって……る…」

「前の錨の絵とかもそうだけどすごくうまいよね!もしかして中学の時美術部だったとか?」

「違うよ。中学生の時には部活には所属していなかったよ」

「すごいすごい!本当に莉子のこと尊敬するよ~」


「お姉ちゃんも、絵が上手だったな~」懐かしむように永遠ちゃんが呟くと、この世界は黄昏たそがれ時を迎えた。





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