「会いたい」

「莉子ちゃん、か……」

自宅へと続く一本道を歩きながら、さっきまでの会話を振り返る。

「それにしても……」

 さっきまで会っていた女の子、莉子ちゃんはあまりにもいなくなったお姉ちゃんにそっくりだった。

 まずは莉子ちゃんの匂い。莉子ちゃんの匂いを嗅いだ時、懐かしさと安心感をすごく感じた。なんて表現したらいいかわからないけど、私にとってどんな香水よりも莉子ちゃんとお姉ちゃんの匂いは、私の心を安らぎで満たしてくれた。話し方もそっくりだった。話していると、心が落ち着く感覚になる。お姉ちゃんと話していてそうなっていたことが、莉子ちゃんと話していても感じた。


 お姉ちゃんと私は姉妹であり、恋人だった。私が告白して、両親に内緒で2人きりのときは恋人として接した。

ハグをした。キスをした。姉妹でしてはいけないこともした。お姉ちゃんを私はひたすらいじめた。そしてお姉ちゃんから、甘い甘い吐息が聞けて、嬉しくなって、ますますしたくなって余計にいじめた……。


 ショックだった。ある日突然いなくなったから。両親は、

「養子に行った」としか説明してくれなかった。絶対、違う理由がある。私には言えない理由が、きっとあるはず。

「会いたいなぁ、元気かな……ねぇ、会いたいよ……?お姉ちゃん……」

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