終わる。はじまる。
私の行方は
そのうち、進路について面談をする日になった。相も変わらず特に進路希望はなかったので、進路指導の先生におすすめされたり、提案されたことに対して、全部、「ええ」や「はい」、「そうですね」、「それでいいと思います」で乗り切り、薦められた通りに私が住んでいる県で一番の学校を受験することになった。それが、だいたい12月半ばのこと。
しかし…。12月下旬。
「すまん。4月から転勤することになってしまった。しかもこの九州から東海にだ。まぁここよりは田舎ではないだろうが、だいぶ飛ばされてしまった。左遷?いや、栄転か。私があそこを変え……とにかく一家で引っ越しだ!という話を昨日……」
と、おとうさんの転勤が決まってしまった。
「莉子はどうする?たしかここの一番いい学校に行くんだろう?そこに行きたいのなら、無理に一緒に来てくれとは言えないという気持ちもある。莉子が一人で残ろうが、私が単身赴任するか、いずれ考えればいいから、どうしたいか、少し急だが考えておいてくれ。俺も先祖伝来の地を離れるのは耐え難いものがあるからな」
そう言われて、しばらく考えればいいのだろうけど、なぜか私は即答した。
「……行く」
おとうさんは「意外なこと言うな」って言いたそうないう顔をして驚いた。
さらに大きく息を吸い、吐き出す強さで私は言う。はっきり言って勢いでだった。
「一緒に行くわ!どこまでも。家族、だもの!」
※ ※ ※
年が明け、向こうのとある高校を受験し、無事合格。あれよあれよのうちに卒業式の日を迎え、その数日後には引越し業者さんがうちに現れ、家財を運んでいき、さらにその数日後には私たち家族3人も新天地に旅立った。
結局誰にも引っ越すことを言わなかった。友達にも、クラスメイトにも。みんな、私がどの高校に行くのか、私の将来やりたいことは何か、毎日のように誰かしらが聞いてきたけど、やんわりとはぐらかしたりして誤魔化してきた。言ったらきっとお別れ会みたいなことを企画しそうな人たちだから。
新しい家のある場所は、目の前に太平洋が広がる、とても素敵な場所にあった。
風が春の香りを伝えてくる中、私の、新しい生活が、ここで始まる。
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