第21話 ユイちゃんの分

翌日、ハルマは委員会が長引いて、俺とタツオミだけが先に勉強会に来ていた。


部屋は、お兄さんの仕事のものが置いてあったので、タツオミの部屋でやることにした。


タツオミやお兄さんの問題集や参考書が本棚に詰まっていて、使いたいものがあれば借りていいと言われた。


カーペットに座って本棚を見あげる。

小学生用から大学受験まで網羅されていて、もう本屋のコーナーばりの迫力だ。

タツオミも横に座り、俺に必要そうなものを見繕って出して、特徴を説明してくれる。



一通り決まったので、気になったことを聞いてみた。


「昨日、突然でごめんね。でも、二人とも、喜んでたよ。」


タツオミのご機嫌をうかがう。


「あ、ああ。それなら良かった。あんまり、ユイちゃん、わかってなさそうだったから……。」


「ユイちゃんは、私大文系だから、数学は定期考査のためだけなんだ。」


「そっか。それならいいけど……。」


タツオミは浮かない顔だ。



「何かあったの?」


「あ、うん。わからないところを聞きたいからって、メッセージ交換したんだけど……。結構やりとりが長くてさ。時間とられるな……って。」



そうだった。

タツオミは女の子から時間を取られるのが嫌だったんだ。


「ご、ごめんね。ユイちゃん、いい子なんだけど。」


「別に、リョウスケが謝ることじゃないよ。まあ、何か言われたら、あまり俺は連絡マメじゃないって、言っててもらえるかな。」


「わかったよ……。」



なんかユイちゃんにも悪いことをした。

でも、ユイちゃんくらい積極的なら、タツオミがダメでもすぐ次に行きそうだ。



にしても、あの華やかな勉強会の感じは惜しかった。

ユイちゃんがダメでも、カナンちゃんくらいはそのまま残ってくれないかな……。

なんて思っていた。

でも、主催者が……ねぇ。



タツオミをチラッと見る。


「どうしたの?」


「あ、いや……。次回もユイちゃんが来たいって言ったら迷惑……?」


「うーん……。」



タツオミはしばし考えている。


「人脈的に考えるなら、ユイちゃんみたいなアクティブな女の子ってさ、これから活躍すると思うんだよね。友達多いし、リーダータイプだし。」


それっぽく言ってみる。



「リョウスケは、一緒に勉強したいんだね。」


「あ、うん。まあ……平たく言うと、俺、おっぱいが大きい子が好きなんだ。だからね、目の保養にはすごくいいよ……。」


今更何の説得力もないが、女好き、おっぱい好きをアピールしてみる。

不純な動機で、タツオミに呆れられるかもしれない。

が、そもそもコレが本来のオレなのだ。



「ふーん。じゃあ、リョウスケ次第だね。」


「俺次第?」


タツオミに腕を引っ張られ、キスをされる。


「あっ……んぐ……!」


そうだった、忘れていた。

キスまではOKだったのだ。


思わずビビッたが、約束通り、大人しくタツオミとキスをする。

ユイちゃんのアプローチは全く効かなかったようだ。



今度は押し倒され、タツオミは俺の下半身を触ってきた。


「あ!ちょ、ちょっと……!」


「股間くらい、友達同士でも触るでしょ?」


「いや!その触り方はないっ!」


タツオミの手を払いのけるが、そのまま手首を掴まれる。



「これはね、昨日のユイちゃんへの指導分だよ。」


タツオミがにっこり笑って言った。



「……ユイちゃんの指導分まで……俺が体で払うってこと?」


「そういうこと。」


なんてことだ。

こういう展開、俺のスマホの漫画で見たことがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る