第15話 学習計画
まもなくして、俺はタツオミの家に来るように言われた。
今までの模試などを踏まえて、しっかり勉強の計画を立てた方がいいということだった。
それは、自分にとってありがたい話だった。
今は学校の授業をしのぐような勉強ばかりで、結局忘れてしまう。
そんな場当たりなやり方では、せっかくの2年間もあっという間だ。
だからといって、学校の先生はそこまで相談に乗ってくれない。
「ごめんね、時間とらせて。予備校に行けばいいんだろうけど……。」
「そうとも限らないよ。予備校に通っても、新しくやることを増やされて、成績が上がらない人なんてたくさんいるから。やっぱり自分なりにやったことのアドバイスをもらうくらいに、積極的に関わらないと。俺は、兄貴がいたから、相談しやすいんだよね。」
またしても次元が違った。
計画を立てるのは、話しながらやるし時間もかかるので、図書館やお店では難しい。
だから休日に、タツオミの部屋で、ということだった。
タツオミの家族にも食べてもらえるように、お礼のお菓子を買っていく。
――――――――――――
タツオミの部屋はよく片づいていた。
ハルマの部屋もキレイだから、部屋のスッキリさと偏差値は関係あるかもしれない。
早速、教科書と模試の結果を見ながら話をしていく。
「究極は、教科書だよ。どう使うかだね。模試も、自分が何を狙って勉強してきたか、それがどう成果に出たか突き合わせながら分析しないと、ただの宝くじになっちゃう。」
狙って勉強するとか、初めて聞く言葉だ。
タツオミはいつも新しい視点をくれて、わかりやすく説明してくれる。
こうやって話していくうちに、何を勉強したらいいか、どこを学校でやってどこを自学でやるかが見えてきた。
感動した。
自分のなかに、むくむくとヤル気が湧いてくるのがわかる。
結局、計画づくりだけで、丸1日かかった。
「この計画もさ、これで終わりじゃなくて、やってみて、修正して、なんだ。一人でできる人もいるけど、俺はやっぱり人に相談しないと無理だね。次の模試が終わったら、また振り返りをしようよ。」
「本当にありがとう……。俺の2年間がまともな2年間になりそうだよ……。」
涙が出そうだ。
「……あのさ、改めて聞くけど、ハルマとは、付き合ってるんだよね?」
急に言われドキッとしたが、ここまで世話になって嘘はつきたくない。
「あ、うん。前に聞かれたときは付き合ってなかったんだけど、その後に……。」
「そうなんだ。リョウスケは、どうして心境が変わったの?」
まさか、キスが気持ちいいからとか、ねとられの妄想のためにとは言えない。
「うん、まあ、なんか、意識したら、逆に好きかも……って思い始めて……。」
「へえ。そういうこともあるんだね。」
「うん。俺は、女の子好きだと自負してたからね。」
今でも、女の子にムラムラはするし、他の男を対象に見たことはない。
ハルマだけ、特別なのだ。
「やっぱり俺にとって、進路を恋人に合わせるなんて、信じられないよ。別れたら、後悔しない?」
別れる?
考えたこともなかった。
下手して、どちらかに彼女ができてもズルズル付き合ってそうとすら思ってた。
でも、確かにリカちゃんの時は、キスを拒まれた。
他に大切な人ができたら……別れるのかもしれない。
「ハルマが進路を変えるならそうかもしれないけど、俺はこだわりがないから。幸い、都合のいい大学もあるし。勉強は俺にとっては大変だけど、タツオミのおかげで頑張れそうだし。後悔しないよ。」
高校も、ハルマに引っ張られて頑張れた。
ふわふわしてる自分が、よくやったと思う。
今回も、それでいいんだ。
志望校が決まったから、こうして頑張る気になった。
「なんか……リョウスケらしいね。」
「え、どういう意味?」
アホすぎたかな。
「進路の話なんて、悩んでるふりしながら大抵みんな後回しにしてるよ。それをハルマのために俺に聞いてくるところとか、素直だな、って。前向きで、感謝できるところが、リョウスケの魅力だよね。」
「まあ、ハルマからは……バカだって言われてるとこだね。難しく考えることができないんだよ。」
「ああ、わかるよ。自分の魅力をわからないままなところは、バカだ。」
「あ、改めて言われると傷つくな。そんなに……かなぁ……。」
タツオミはなぜか笑っている。
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