第13話 リョウスケの返事

家に帰り、ベッドに横になり、ボーっとする。


恋愛って、もっと楽しいものだと思ってた。

こんなに自分のことすらわからないものとは思っていなかった。


いや、簡単に考えれば、ハルマが女の子なら、即付き合うよ。



その辺の女の子より可愛いからね。

肌もすべすべだし、細いけどほどよく筋肉があるし。

口も小さくて柔らかいし。


そこまで整っていて、なぜ男なんだろう。



まあ…一回性別は置いといて、そもそもハルマが誰かと付き合い始めたら俺がどんな気持ちになるか考えてみよう。

好きなら、きっとやきもちが起こるはずだ。



試しに、ハルマをタツオミにとられたらどうなるかを妄想してみる。


タツオミに微笑むハルマ。

タツオミと戯れ合うハルマ。

タツオミとキスするハルマ。

タツオミと……。



……ハルマが、幸せそうなら、それでも良さそう……と思う自分がいた。

むしろお似合いだよ。


ただ、一緒にいる時間が減るのは……やっぱり寂しいかな。

でも、そんなの、自己都合も甚だしいよね。

好きだからこその寂しさではなさそう。



試しに、「自分に」彼女がいたら、寂しいだろうかと考える。


ハルマからの連絡がなくても、

ハルマと遊べなくても、

ハルマと勉強できなくても、

ハルマとキスできなくても、


彼女がいれば寂しくない!


寂しいのは、「一人が寂しい」だけか……。




ちなみにハルマが、「好きじゃないのに」タツオミに迫られるところを妄想してみる。



キスを強引にされてしまうハルマ。

抵抗虚しく服を脱がされるハルマ。

俺以外の男に抱かれるハルマ。

嫌なのに、感じてしまうハルマ。



なんか……萌える。


なんだ俺。

ハルマのことを何だと思ってるんだ。


いや、なんていうか、キスのときのハルマが可愛いのがいけない。

あれを見てしまったら、色んなシチュエーションでああいうハルマを見たくなる。


ちなみに、友情出演のタツオミにも申し訳ない。

ハルマを譲っていいのは、今のところタツオミくらいしかいないから。



なんか、これ、”ねとられ”って言うのかな。


男同士ですらハードル高いと思ってたのに、ねとられまで行けるって、俺すげーな。


ハルマ、本当に俺なんかを好きになって、大丈夫なんだろうか。



――――――――――――


翌日から、俺はハルマの彼氏になることを決意した。

性欲に正直な俺は、ねとられの興奮に興味が出てきてしまった。


間男が出現するかはわからないが、少なくとも俺とハルマは仲良くなくてはいけない。



------------


土曜日、ハルマの参考書を買いに付き合うことになっていた。

本屋までの道中に言った。



「あのさ、昨日、よく考えたんだ。ちゃんと、ハルマと付き合いたいと思う。」


「…え?本当に?」


「うん。いいかな?」


「あ、うん。よろしくね…。」


ハルマは嬉しいというより、戸惑いを露わにしている。

下心がバレてしまっただろうか。



「どうして心境が変わったの?」


「まあ、やっぱり好きなんだな、って気づいただけだよ。」


嘘ではない。

男であることだけが引っかかってるんだ。

だから、好きは好きだ。



「…ありがとう…。」


そう呟いたハルマを見る。


ハルマは顔を赤らめてうつむきながら歩いている。

不覚にも、可愛いと思った。





参考書を買い、お昼を食べたあと、なんとなくハルマの部屋でダラダラすることになった。


ハルマの両親も家にいる。

小さい頃からの付き合いだから、気兼ねはない。

軽く挨拶して、二階のハルマの部屋に入った。



いつもの場所に座ると、ハルマがのしかかってきて、キスの嵐を受けた。


力が強くて押し倒される。

忘れてた、コイツも男だった。



キスで乱れた息のまま、ハルマが言った。


「……俺のどこが好き?」


「えっと、顔と体……。」


突然聞かれて、本音が出た。

頬をつねられる。



「いたっ!いや、俺にとっては、すごく大事な2つなんだよ!で、性格的にはね、可愛いとこだよ!」


「……可愛い……って、何?」


「え……。これまでずっと好きでいてくれたり、嫉妬したり、今みたいに甘えてくるところ。」


「…それって女々しくて、面倒くさいよね…。」


「そんなんじゃないよ。ただ、時々思うんだ。俺なんかとつるんでないで、他の奴と一緒にいたら、お前はもっとすごい男になれんじゃないか、って。」



もし、俺に合わせて高校を選ばなければ。

俺じゃなくて、タツオミを好きになっていれば。



「……俺は、リョウスケじゃなきゃ嫌だよ。」


ハルマは俺にギュッと抱きついた。



「お前こそ、俺の何がいいんだよ。」


「……優しくて、明るくて、バカで、スケベなとこ。」


「過不足なくその4つの言葉が俺の全てだよね!わかるよ!」


バカにされてる…。


ハルマはクスクスと笑った。




なんとなく無言になり、部屋に時計の音が響く。

自分の上に乗ったハルマの体温を感じる。


緊張も高鳴りもなかった。


俺は、そっとハルマを抱きしめて、頭をなでた。


ちょっと前なら、ハルマが女の子だったら良かったのに…と、この状況を妄想で塗り替えていただろう。


でも今は違った。


ハルマとこうしていても、違和感がなかった。

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