第11話 ハルマの告白

俺は、ハルマが好きなんだろうか。

好きは好きだが、恋人同士のような甘い好きとはちょっと違う。


え?じゃあキスフレ?

練習……だったから、それが一番近いだろう。

あっちもキスフレと思ってるなら良かったけど。


しばらく悶々としていたが、ハッキリさせたくない気持ちが勝り、流れに任せることにした。





その日も学校が終わり、いつもと同じように、ランニングをしてシャワー浴び、勉強に入る。

ハルマもシャワーを浴びて、部屋に戻ってきた。


「あれ?なんか、いい匂いがする……。」


シャンプーや、ボディソープとも違う香りだ。


「前に、リョウスケが好きだって言ってたやつ。覚えてる?」



ちょっと前、彼女ほしい願望がピークのとき、香水を見に行ったことがある。

結局何も買わなかったが、女の子用の方で好みのものが見つかった。

ハルマが着けているのはソレだ。


「……よく覚えてたね……。」


ハルマはちょっとほほえんだが、すぐ顔を背けた。


確信した。

ハルマは、俺のことが好きだ。





なんとなく教材は開くが、全く頭が働かない。


いつもならさっさと集中するハルマも、手が動いてない。


1秒がこんなに長いとは知らなかった。




「あのさ…リョウスケは、タツオミのことはどう思ってるの?」


「…いい友達だよ。」


明らかに声にぎこちなさが出ている。



「そっか。なんか、ずっとリョウスケとは二人で過ごしてきたから、なんか三人って、慣れなくて。最近二人が仲良いから、俺、邪魔かな、って。」


「いやいやいや!友達に邪魔とかってある?」


きっと嫉妬してるんだ。

ハルマは視線を床に落として、唇を噛み締めている。



「………もしかして、ハルマは……俺のことが好きなの?」


聞いてしまった。

しかも直球で。

でも、単に興味からじゃない。

ハルマが可哀想に思えたからだ。



ハルマはハッとこっちを見て、顔を赤らめた。

そして、すぐにまた視線を外した。



「そうだよ…。好きなんだ、俺は、リョウスケのことが。」


こんな日が来るなんて、考えたことがなかった。



「そうなんだ…。それって…いつから…。」


「……中3のとき、生徒会やってたじゃん。お前が副会長で、俺が議長。その時の、書記だった子が、お前のこと好きだったんだ。」


「え?知らなかった。」


大人しかったけど、それなりに可愛かった子だ。



「それを知って、嫌な気分になった自分がいたんだ。リョウスケがその子と付き合ったら、俺とリョウスケの時間が無くなる。そうと思うと、悲しかった。だから、俺はリョウスケが好きなんだってわかって……。俺は、ただ、ずっと……リョウスケとこうして一緒にいたいんだ。」


ハルマは、恋愛においてはなんの意味をなさない教科書を見つめて話した。



「そうだったんだ……。全然気づかなかった……。じゃ、じゃあ、この練習、って……意図的に??」


「冗談で言ったつもりだったけど、実際こうなって、俺も驚いたよ。でも俺は……嬉しかった。」 


ハルマは儚げに笑った。



「リョウスケは……俺のこと…どう思ってるの?」


ハルマは視線をこっちに向けた。

心臓の鼓動が速くなる。



「俺は……その、元々ハルマのことは友達として好きだし、キスもしちゃうくらいだから、たぶん、好きなんだよ。でも、なんというか、まだ自分には勢いがない、っていうか。気持ちに整理がつかないんだ…。」


ハッキリ言えないのは申し訳なかったが、そのまま本当に恋人同士になるのは、嘘をついている気がした。



「…わかった…ありがとう。無理に好きになってくれなくていいから…。」


ハルマの香水の匂いが鼻をくすぐる。


ハルマはずっと好きでいてくれて、勇気を出して告白してくれた。


俺は、これでいいんだろうか。

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