第4話 リカちゃん

ハルマと謎の関係になってから、1週間が経った。


ほぼ毎日ハルマの家に行き、

ランニングをして、勉強して、キスをする。


さすがにこれだけキスをしてれば、毎回あの興奮ではない。

慣れてきた。

男として一皮むけたのだ。

相手はハルマだけど。


ランニングの効果もあり、俺の日々暴走していた性欲も落ち着いてきた。



ただ、友人から言われた、「俺の好きな子をハルマがとっている疑惑」は気になっていた。



俺にチョコをくれた子の一人で、リカちゃんがいる。

俺が見た限り、ハルマにはチョコをあげてない。

バレンタインデーの前日、雨が降っていて傘を貸してあげたのだ。

そのお礼にチョコをくれた。



そこまでハッキリ義理とわかっているのも悲しいが、ちょっとリカちゃんを利用しようと思った。



――――――――――――


いつものようにハルマの家に行く。

ランニングをして、シャワーを浴びる。

ちなみに毎回申し訳ないので、ソープセットとタオルは用意した。


部屋でくつろぐあたりに話してみた。



「俺さ、リカちゃんからチョコもらったんだ。多分、傘を貸したお礼だけど、やっぱりチョコをもらうと意識しちゃうよな。」


いざ口に出すと、本当にリカちゃんが意識されてくる。



「そうなんだ。告られたの?」


「そうじゃないけど。まあ、話しやすいし、かわいいとは思ってるよ。」


確かにリカちゃんは素朴にかわいい。

ボブが似合っていて、バレー部だ。

スタイルもいい。



「……告白したら?」


「あ、いやまだ、意識し始めたばっかりだからさ。もう少し、仲良くなったら考えるよ。」



大抵、こうやってもじもじしているうちに、女の子はハルマを好きになり、女の子がハルマに告白して、振られ、俺は何もしないまま恋が終わる。


告白する気はないが、リカちゃんとは話してみたくなった。



帰る時、教材を片付ながらハルマを見た。

近づいてキスをしようとしたら、ハルマが俺の口を手でふさいだ。


「好きな子ができたんなら、やめようよ。」


確かにそうだ。


「ご、ごめん。そうだね。」


恥ずかしかった。

設定がブレブレだ。


でも内心、ハルマとキスできないのは残念だった。

リカちゃんといきなりキスはできない。


もう少し、タイミングを考えれば良かった。



――――――――――――


翌日、登校してから意識的にリカちゃんに話しかけてみた。


たまたま、"小さくてカワイイ系"の、好きなキャラが一緒だった。



「ショップも行ってみたいんだけど、男が行くにはちょっと……と思って。」


「じゃあ、今週末行かない?ちょうど新作出るんだよ。」


マ、マジで?

デートじゃん!



「本当?!それ助かる!」


「ハルマ君はいいの?」


今、奇跡的にハルマはこの場にいない。



「あいつは……そこまで小カワ系にはハマってないから、行かなくていいと思う。あ、じゃあ連絡先教えて。」



連絡先をスムーズに交換する。

いい感じだ。

もうリカちゃんと付き合いたい。



「あとで、詳しいこと送るね。」


「ああ、よろしく。じゃあ、またね。」


俺はそそくさと教室を出た。

もたもたしてると、いつハルマが来るかわからない。



メッセージが使えればこっちのもんだ。

なんだ、俺もやればできるじゃないか。

もしかしたら、キスにがっつかなくなったことによる男の余裕かもしれない。



その日は体調不良と偽って、ハルマの家には行かなかった。

絶対に今の俺はにやけている。

ハルマに仕掛けるはずの罠(?)のつもりが、そんなことはどうでもよくなった。



その後も、何かにつけてハルマの家に行くのは断り、週末に向けて準備をした。


まずは服だ。

今更ながらコーディネートの勉強だ。

美容室にも行く。

なんとなく爪も切っておく。

口臭は大丈夫だろうか……ハルマとキスするときに言われたことはないけど。



リカちゃんからメッセージが入った。


『10:00に駅前集合でどう?あと、ショップ見た後、近くのスイーツのお店に行かない?すごく大きなパフェのお店なんだけどさ、女子だけだと食べきれなくて。』


『もちろんいいよ!俺も普段食べれないから、楽しみだよ。』



ショップだけじゃなくて、スイーツまで…。

甘い…なんて甘いんだ…。



『ちょっと急でごめん、なんだけど、ココミちゃんも来ていいかな?いつか一緒に食べようって約束してて。』


『いいよ。せっかくだから、みんなで行こう!』



もう一人、女の子が増えた…。

いや、なんていうかね。

いつもハルマがいると、4人でいても1:3なんよ。

どんなに女の子がいても、一塊りでハルマ寄りなんよ。

だから、今回の1:2は嬉しい…。


そして週末がやってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る