第5話 週末デート

ちょっと早めに着いたはずなのに、みんなもう着いていた。


リカちゃんに、ココミちゃん。

そして…


なぜか、ハルマがいた。



「なんでいるの?!」


挨拶も忘れて大声を出してしまった。



「ごめんね、直前でココミちゃんが、リョウスケ君もくるならハルマ君もって……。」


リカちゃんが申し訳なさそうに手を合わせる。



そういえば、ココミちゃんは前にハルマに告白していた。

まだ諦めてなかったのか!

女子のタフさをみくびっていた。



「悪いね、邪魔しちゃって。」


ハルマが笑いながら言う。



「いや、全然、大丈夫。うん、ホント大丈夫。」


なぜ俺がこんなにビビッているんだ。



「今日のパフェ、本当に大きいの!多分三人でも食べきれないからさ、男子よろしくね!」


ぽっちゃり目のココミちゃんが言う。


そうだ!ココミちゃんがいるんだから、ハルマとココミちゃんをくっつけよう!


そんな想定外の出だしで"小カワ系"ショップへ向かった。



――――――――――――


ショップは、小カワ系だけでなく、ファンシーなキャラが至るところにあり、奥の方に目当てのコーナーがあった。


お店は新作が出た日ということもあり、ごったがえしている。


そうこうしているうちに、リカちゃんとココミちゃんとはぐれた。



横にハルマがいる。

なんか怖い。


「怒ってる?」


「なんで?」


「なんとなく、そんなオーラが……。」


「怒ってないよ、別に。」


「じゃあ、良かった。俺も見に行くよ。」



確かに、ハルマが怒る理由はない。

俺も怒られる筋合いはない。


堂々としてればいいんだ、堂々と!


気を取り直して、棚をみて歩く。

小カワ系の棚には小物から、タオル、パーカーまで売ってある。



「か、かわいい…!」


こういうファンシーなものは、単品で見るよりまとめて見た方が可愛さが増す。

ハルマと遊ぶとなかなかこういうとこに来ないから新鮮だ。



「良かったね、いっぱいあって。」


ハルマも棚をしげしげと見ている。


「いつもさ、メモ帳とかかわいいな、って思うんだけど、どこで使うんだよ、ってなるんだ。」


「確かに。」


「ペンケースもめっちゃかわいいけど…やっぱどこで使おう、ってなるんだよな。」


「大学受験の時に持ってけば?」


ハルマがにやにやして言う。


「いや、ふざけすぎでしょ。それで落ちたら"やっぱりな"みたい思われるから。」


思わず笑ってしまった。


結局、二人で楽しく買い物してしまった。




ショップを出ると、女子もあとから出てきた。

リカちゃんはかなり買い込んだようだ。


「ごめんね待たせて!」


リカちゃんはだいぶ興奮している。


「俺たちも今出たばかりだから。新作のぬいぐるみ、買えた?」



今回の新作はぬいぐるみが目玉だ。

リカちゃんは紙袋を開いて見せてくれた。

メインキャラ5体がちゃんと入ってる。



「コンプリートしたんだ!さすがだね!」


5体あると、迫力がある。



「やっぱり……5人そろわないと、可哀想だな……って。」


リカちゃんから並々ならぬ情熱を感じる。


リカちゃんのその真っ直ぐな感じが可愛かった。

うん、正直、2人デートならどれだけ嬉しかったか。


ココミちゃんがハルマにキャラ説明をしている。

俺も好きだからハルマも知ってるはずだが、ココミちゃんの話をよく聞いてあげている。

ハルマは聞き上手で、その辺りも女の子的には他の男子と違う魅力を感じるらしい。




移動して、スイーツカフェに入る。

そして、目の前に山盛りのパフェが現れた。

女子二人と俺は写真を撮りまくる。

こういうとき、ハルマはそういうことをしない。



「あ!リカちゃん!ぬいぐるみと一緒にパフェの写真撮ろうよ!」


リカちゃんとぬいぐるみとパフェ、絶対可愛い。


「それいいね!」


リカちゃんはぬいぐるみを取り出した。


「俺、写真撮ってあげるよ。」


ハルマが撮影係をかって出た。


リカちゃんを真ん中に座らせ、両脇に俺とココミちゃん。

もちろんその後、俺とハルマと交代して写真もとった。

これはココミちゃん用だ。



撮影会が終わり、とりわけ用のスプーンでリカちゃんがパフェを分けてくれる。

ざっと見て、4人で分けても一人あたり普通のパフェを2人前は食べなきゃいけない気がする。



「じゃあ!完食目指してがんばりましょう!」


リカちゃんが張り切って言う。


アイスが溶けてしまうので、そこから攻めていく。

一度形が崩れたら、あとはひたすら食べる作業だ。



「食べても食べても減ってる気がしない……。」


ハルマが弱音を吐いた。


確かに、ハルマは甘い物は得意じゃなく、大抵半分は俺によこす。

じゃあ、なんで今回来たんだろう?



「今回は残すなよ。さすがにこれは俺もお前の分まで食べられないから。」


「……本当に二人って、仲良いよね。付き合ってるって本当なの?」


ココミちゃんが聞いてきた。


噂の出所が本人の、あのデマね。



「まさか、コイツが適当に言った嘘だよ。」


ハルマをチラッと見て言う。



ハルマはアイスをツンツンしている。

おそらく、食べずに溶けるのを待つ作戦だ。



「嘘かぁ。まあ、そうかなとは思ったけど……。リョウスケ君は彼女いないってこと?」


「あ、うん。全然いない。絶賛募集中。」


つい力んで言ってしまった。



「へえ。好きなタイプは?」


いいぞココミちゃん!

よくぞ聞いてくれた!



「タイプってタイプはないんだけど、やっぱり明るい子がいいよね。俺、スポーツ好きだから、一緒に楽しめるといいな。」


まあ、もうリカちゃんのことですよね。



「胸はDカップ以上が希望じゃなかった?」


ハルマが口をはさむ。



「いやいやいや!それは、主じゃないから!」


「俺にお気に入りの画像送ってくれるじゃん。」


ハルマがスマホをいじり始める。



「やめろ!見せなくていいから!」


女子の様子をチラッと見る。


ドン引きしてる。



「俺のことは、まあ、いいから……。リカちゃんは、どんな人が好きなの?」


ココミちゃんに聞くのは酷だと思って、リカちゃんに聞いた。



「あ、私、彼氏がいて、小カワ系のらっこ先生みたいな人なんです。自分がしっかりしてて、優しい人が好きなんです!」


……彼氏?

彼氏いるの?

彼氏いるのに、俺とショップに行く約束したの?

あ、でも結局ココミちゃんを呼ぶくらいだから……

そういうことか……。



「うん、わかるよ。らっこ先生、カッコイイよね。俺だってらっこ先生なら惚れちゃうよ。」


そんなわけのわからないフォローをした後、どれくらいパフェを食べたかの記憶はない。

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