第2話 変わらない罅だらけの人生
「す、すみませんでしたー!!」
「……雑魚が」
鋼を彷彿させる白銀の瞳をした少年、
日本人の黒髪は変わらないが珍しい目の色と色白の肌に、くだらない野次で飛ばして挑発してきた他校の生徒と朝から喧嘩をしていた。
チャイムの音が遠くから耳に掠める。
授業はもう始まっているだろう……短気な野郎どもは、面倒なことこの上ない。
「……はぁ、めんどくせぇ」
刃は学校へ戻り、昼休みまで屋上で眠ることにした。
瞼を閉じると、今まで投げかけられてきた誰かの罵倒が頭を過る。
『あの子変な目の色よね』
……昔から、俺の家系は目の色素が薄かったらしい。
だから他人からはありえないと言われ、気味悪がられていた。
そんな俺の目を馬鹿にしないで、麗な目よ、なんて褒めてくれた母も。
俺とお揃いだななんて笑ってくれた父も。
二人とも、変な怪物に殺された。あの日から、俺はあの怪異に出くわしやすくなるために、不良になった。チームなんて物は組まない。
復讐を果たすのは、俺だけでいいからだ。そうやって周りの人間に冷たくなっていくうちに、他の学校の奴らから色々と言われるようになった。
『『『気持ち悪い』』』
そういうお前らが、一番に気持ち悪いんだって気づくこともねえのな。
可哀そうってお前らが嫌うマウントとってなくちゃ、誰かを助けようとも思わない屑の集まりなんか興味ねえ。
――……そんな奴になるくらいなら、俺は一人でいい。
俺の心の罅がいくつ入ろうと、復讐という刃物になった心のガラス片を強く握ってきた。大勢の言葉で日和っていては復讐は果たせない。
刃は目を開けて、空に浮かぶ太陽に手を伸ばす。
「……世の中、クソったれだ」
鳥が飛んでいく様を見据えながら、空の青空がやけに冷ややかに映ったのは言語化が脳内の中だけしかできない彼の目だけだった。昼は適当に焼きそばパンで済ませ授業に出ず刃は放課後の時間を見計らって学校を出た。
俺が住んでいる
一つ厄介なのは、カラスが多いこと。
ゴミと不良がやたら集まりやすい点を除けば嫌な街じゃない。漫画みたいに喧嘩をしあって自然と分かり合える、なんて価値観は俺にはない。
あんなの、漫画の中だけの世界だ。
信号が青になった横断歩道を渡る。
歩道を渡り終え、路地裏近くの道の途中でドン、と肩が揺れる感覚がする。
「痛ってぇな!!」
「……悪い」
「あぁ!? なんだその生返事は!!」
「……わかった、相手してやる」
「ふざけてやがんなぁ? テメェ!! 来いや!!」
刃は強く、拳を握った。
暴虐なるままに、俺は不良共を痛めつけた。
「ひ、ひぃっ」
強面の学生が、血に塗れた一人の学ラン服を着た少年から離れていく。
少年は床に気絶したいじめっこの男子生徒たちを足蹴にしながら唾を吐く。
……逃げるような奴らが、俺に喧嘩売るなよな。
「……くだらねえ」
……血が付いた学ランを洗うのも、金がかかるっつーのに。
こうやって寄ってたかって集まってこなくちゃ立ってられないような弱い奴らが俺は大嫌いだった。無駄に群れて、弱い奴を探して見下して尊厳を踏みにじんないと立ってられないのかね……本当に、気持ち悪い。
もう既に時間は夕方を差し掛かっていた。
……無駄に長引いたか。
「帰らないとな」
くだらない不良共に連れられて俺は家へと帰ることにした。
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