彷徨い歩いたあの日のこと

仁志隆生

彷徨い歩いたあの日のこと

 気がつくと暗い道を歩いていた。


 ってここはどこだろ。住宅地っぽいけど。


 なんか頭がボンヤリしている……。

 とりあえず街灯の下まで行き、腕時計を見ると深夜一時。

 いったい俺の身に何があったんだ?


 ん~、あっちの方明るいな。

 よし行ってみるかと思った時……意識が途切れた。




 次に気がつくと、ファーストフード店のテーブルに突っ伏していた。

 あれ?

 顔を上げて辺りを見ると、何人かの客がいるな。


 そう思っているとそのうちの一人、年配の男性が声をかけてきた。

「兄ちゃん大丈夫か? ま、これでも飲みな」

 そう言ってジュースを差し出してきた。

 まだ頭がボンヤリしてたが、なんとかお礼言ってご馳走になった。

 

 その人はしばらくしてから、俺に「無理するなよ」と言って店を出ていった。

 俺、どっか具合悪いのかな?

 うん、お店には申し訳ないけど、朝までここにいようかなと思った時、また意識が途切れた。




 気がつくとさっきとは違う道を歩いていた。

 横を見ると大きな公園なのだろう、たくさんの木が並んでいた。

 うーん、どうなってんだよ?

 とりあえずどっか休める場所探すか……と思った時、また意識が途切れた。




 次に気がつくと、タクシーの中だった。

 はい?


「大丈夫ですか? かなりお加減悪いみたいですけど」

 運転手さんが声をかけてきた。

「あ、すみません。大丈夫です」

「そうですか。もうじき着きますからね」

 

 メーターを見ると結構な額になっていた。

 俺、どこにいたんだろ?

 とにかく家に帰れるならいいか。


 しばらくして、自宅であるアパートの前に着いた。

 時計を見たら深夜四時だった。

 その後、また意識が途切れた……。


 


 気がつくと、自分の部屋で寝ていた。

 着替えもせずそのままで。

 外を見ると日が昇っている。


 てかなんで……ああ、思い出してきた。

 

 もう昨日になるけど、会議の後で飲み会があったんだ。

 その何日か前、「何事も経験だよ」と上司から幹事をするように言い渡されたんだが、社長も重役も来るんですが俺でいいのかよと思いながらも良さげな店選んで予約した。


 一次会では半分遠慮しながら飲んでた。

 いい店選んだなと言ってもらえて嬉しく思った。


 終わってから緊張の糸が切れてしまい、二次会でカラオケ行ってガンガン飲みながら歌い、更に一人でメイドバーにも行ってそこでも……。


 財布の中身を見ると思ったほど減ってなかった。

 どうやらボッタクリには引っかからなかったようだな。

 あとメイドさんと取った写真があるわ。

 うむ、可愛らしいのう。記憶があったらよかったのに……。


 ……知らんうちに人に迷惑かけてたみたいだな。

 あの時会った皆様、申し訳ありませんでした。


 飲みすぎには注意しようと思いながら懲りずにあと数回してしまったが、ある意味コロナのおかげでもうしていない。

 もう歳だし、今度やったら死ぬかもな……。



 多少ボヤかしてますが、作者の十数年前の黒歴史でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彷徨い歩いたあの日のこと 仁志隆生 @ryuseienbu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ