第5話 いま体調が悪い方へ:好きなことをして生きよう

利用者さんには、病気になったことを人生を見直すきっかけととらえてほしいと思っている。もし病気をしなかったら、なんとなく仕事を続けていたことだと思う。


病気で仕事を辞め、B型事業所に通い始めたことをきっかけに、自分は何が好きなのか、自分は何をしたいのか、じっくり考えてほしい。仕事を続けていたとしたら、これらについてじっくり考えるのは、定年退職後だろう。だけど、自分の好きなこと、やりたいことに挑戦するのは、何も65歳過ぎてからじゃなくていい。


うちの事業所の利用者さんは、病気や障がいの程度が軽度の人がほとんどだけど、それでも9−17時の仕事に復帰できる人は、1割もいないと思う。体調を崩して短い時間しか働けない人がほとんどだし、60代、70代の利用者さんに対して、うちで訓練して社会で働くなんてことは、ご本人もスタッフである僕たちも考えていない。フルタイムで働けなくたっていいじゃないか。僕は、そう思っている。


僕は、利用者さんには、やりたいこと、好きなことをして人生を充実させることを、考えてほしいと常々思っている。


僕も、嫌いなことは、続かない。恥ずかしながら、学生時代、居酒屋のバイトを3日でバックれたことがある。嫌いなことは続かない。好きなことなら、続けられる。集中できる。利用者さんも僕も同じ人間だ。


利用者さんには、好きなことを楽しく続けていくうちに、気がついたら、以前より長い時間集中していられる。それを目指してほしい。


できれば、その好きなことで、ちょっとお小遣い稼ぎができたらいい。利用者さんの中には、ライブ配信で、ちょっと稼いだり、景品をもらったりしている人もいる。


しかし、この「やりたいこと」「好きなこと」をするというのは、難しい点が一つある。それは、スタッフが代わりに「やりたいこと」「好きなこと」を見つけることはできないという点である。仕事なら、我々が、求人サイトをさらって、利用者さんの希望に合いそうなものを見つけてくることができる。だけど、好きなこと、やりたいことは、そうはいかない。だから、我々は、利用者さんとの面談やちょっとした雑談を大切にしている。


そういうちょっとした会話の中から、元気だった時の趣味、以前からやりたいと思っていたけど、まだ挑戦していないことが見つけられたりする。


日本人は、「我慢」や「苦労」を美徳だと考えがちだ。だけど、好きなことをしても誰にも怒られたりなんかしない。僕たちは、利用者さんの「やりたい」「好きなこと」を全力で応援したい。僕は、そういう生き方をしたい。僕はそう思って仕事をしている。

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