第6話 君の正体は。

 人間じゃない?誰が?…俺が?



「正確には半妖だから人間でもあるんだけどね。まぁ純粋な人ではないね。」



 あっけらかんと言う河守かわもりさん。俺は、全く理解が追いついていなかった。



海里かいりくんが今まで襲われなかったのは、碓氷うすい家である君の人としての親が守ってくれてたのと、多分、あやかし側の親族が見守ってたからじゃないかな。力が制御できていない半妖の子は美味しいらしいからね。俺等にはそのへんはよくわかんないけど。」


「……」


「聞いた感じ、多分だけど海里くんの半妖としての力は今まで封印されてたんじゃないかな。だけど、何らかの方法で封印が解けて、力が戻ってきちゃった。それが君の今の状況。…聞いてる?理解追いついてる?大丈夫?」


「だ、大丈夫です…」



 情報が多すぎる…テストより頭使う…糖分ほしい…


 でも、なんで封印なんかされてたんだ…?解けた原因も心当たりないし…



「封印されてたのは、現世で君に人として生きてほしかったからじゃないかな?そこら辺は親御さんに聞いてご覧。この手の封印は人じゃないとできないからね。解けた原因はちょっとわかんないけど。」



 基本的には優しいうちの両親が頭をよぎる。封印なんてそんな事ができるようにはとても見えないうちの両親。むしろほんわかしているのに。



「うちの親、そんなことする人には見えないんですけど…」


「まぁ、碓氷家だからね。君の家は。」


「碓氷って名字になんか意味があるんですか。」


「んー…言っていいのかわかんないなぁ、こればっかりは。今まで海里くんがそれを知らなかったってことは、親御さんが隠してたってことでしょ?君自身のことは言わなきゃどうにもならないから今言うけど、君の家…というか家系に関しては、俺等が干渉するべきか悩むところではあるよね。本人達に話を聞くのが一番だと思うよ。俺の名前で親御さんに手紙出しとくから話してみたら。」


「ありがとうございます…?」


「いいのいいの。実は俺、名前は結構売れてるしね。…さて、話を戻すよ。」


「…はい。」


「君は半妖。人と妖の間に立つ者。境界線を繋げる者。…まぁそんな肩書は置いといて、今のままだと狙われちゃうから、力を制御しないといけない。」


「制御できるとなにかあるんですか?」


「制御できるってことは攻撃されても反撃することができるよってことだから、少なくとも弱いやつには狙われなくなるね。」


「なるほど…」



 強いやつはどうするんですかと聞きたいけど止めといた。



「まぁ、どうするかはこっちで考えとくよ。来てもらってばっかりで悪いし、今度はこっちから行くから、何時がいいか教えて。」


「えっと…明日からなら何時でもいいですよ。予定が入ってるのは1週間後とかなんで。」


「おっけー。じゃあ君の家に遊びに行くからそのつもりで。あ、大体の場所が分かれば気配辿れるから、住所は教えなくていいよ。この前教えてもらったやつで分かるから。」



 簡単に家は特定できます宣言をされてしまった。個人情報ってなんだろう…


 河守さんは扉の方へ歩いていく。時計は昨日と同じく7時を告げていた。今日はもう帰れということだろう。



「じゃあ明日行くから、そのつもりで。今日も送ってく?」


「いや、今日は考えを整理したいんで歩いて帰ります。」


「わかった。じゃあまたねー」



 ガチャ。キィィ…



 開けられた扉の先には、来たときと同じ竹林が広がっていた。


 挨拶をして店を出る。景色はもう真っ暗だった。


 振り返ると店は消えていて、虫の音しか聞こえない。


 俺は家に向かって歩き出した。









こう兄さん。」


はく?どしたの?」


「お守り返してないでしょ、あの子に。」


「っ!あー……ちょっと出てくるわ。留守番頼んだ。」


「いってらっしゃーい。間に合うと良いね。」



 紅輝こうきは椅子にかけてあった羽織を掴み、店の外へ飛び出した。

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