第3話 猫に連れられて
「にゃーん」
いきなり目の前に現れた猫。と石畳の道。
「えっ猫?かわいい…いやいや、そうじゃなくて…」
俺は混乱していた。めちゃくちゃ混乱していた。
いきなり現れた猫。猫が恋し過ぎて幻覚でも見たか。最近猫に嫌われるようになって、自分が極度の猫好きという自覚持てたし。いや、でも石畳はなんでだ?別に石畳は恋しくないな…
「にゃーん」
猫がもう一度鳴いて、こっちに来いと言うように尻尾を振る。よく見ると紅と蒼の2色で編まれた首輪をしている。どこの家の子だろうか。
俺がいつまで経ってもそっちへ行かないのが気に食わなかったのか、そのまま奥へと歩いて行ってしまった。
「あっ、ちょっと待って…」
つられるように石畳の上を歩く。竹林に囲まれた道は、周りがあまり見渡せない。さっきから後ろから何かの視線を感じる気がするけど、気のせいだろう。絶対に気のせいだろう。ここで振り向いたらヤバい気すらする。
「にゃーん」
俺の前を歩いていた猫が振り返り、俺に、というか俺の後ろに向かって鳴いた。
すると、後ろからずっと感じていた視線がスゥッとなくなった。だからって振り向きはしないよ。怖いから!
何事もなかったかのように猫は歩き出す。少し長い道の先は一つの建物へと繋がっていた。
「なにこれ…」
その建物は、和風、洋風と区分けるよりも和洋折衷と言ったほうがしっくりくるような木造平屋建ての建物だった。石畳は木製の扉へと続いている。
猫はドアに付いている動物用の小さい入口から中に入ってしまった。
「…入るしかないのか…」
流石にお化けは出てこない。多分。きっと。そう思いながら決意を固める。
ガチャ。キィィ…
如何にもホラーのような軋み方をして扉は開いた。正直もう帰りたい。
中に入ると、カウンターが少し奥に見え、その導線以外は何かわからないものが置かれた棚が鎮座していた。店に置かれたよくわからない品々が綺麗だからか、ランプが暖色だからか、ちょっとおしゃれな雰囲気を感じてしまう。
カウンター上では、黒髪の男の人が寝ていた。
「…あの」
一応小声で話しかけたのに、その人はガバっと起き上がった。
少し驚いた様子でこっちを見つめる目は紅い。少し赤みがかった黒髪で長髪を肩口で結んでいる。見たところ20代くらい。
いや、めっちゃ美人だこの人…びっくりしたわ。
普段目にしない紅い目で見られても、不思議と違和感は感じなかった。
というかなんか警戒されてる?さては寝起きは機嫌が悪いタイプか。
「…どっから来た。」
そっかぁ、イケメンは声もイケメンかー。羨ましいわー…じゃなくて!
「えっ…えっと…茜町の神社?から?」
「…じゃあ客だな。悪い悪い、入って来たの気づかなかったわ。」
そう言ってその人はにっこり笑った。これぞまさに営業スマイルって感じで。
「ようこそ、ここは
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