第15話-美琴の異変
夕方になり、美琴が帰って来る音がした。ガチャガチャと鍵が開き、中に入ってすぐに閉める音がした。
気配もちゃんと美琴だ。
俺は動く許可を得てないので、脱衣所で待つ。
洗濯物はシワ一つ無く綺麗に乾いる。これは褒められるだろう!
ワクワクと美琴が来るのを待つが、一向にこちらにやって来ない。
どうしたんだろう。
少し心配になってくる。
ここから動いていいとは言われてない。でも……動いてはいけないとも言われてない。大前提として洗濯機は動かない物だから、動けば美琴は驚いてしまう。
どうしようか。
『美琴!みこ!……み、』
ふと、外に何か別の気配を感じる。
それは人間である事には間違いないが、酷く気が立っているように思えた。
すると、怒声と共に玄関の引き戸がバンバンと叩かれる。
「おい!美琴!開けろよ!!居るの分かってんだよ!!」
「ヒッ……」
美琴のその小さな悲鳴に、俺の神経がザワリと逆撫でされるような不快感を覚える。
首を刎ねてやりたい衝動に駆られるが、この世界での殺しは美琴に迷惑が掛かる。
本体の洗濯機の蓋をぱかんと開けると、念力を使って脱衣所の引き戸を開く。その先に居る美琴を浮き上がらせこちらに連れて来た。
乱暴に叩かれる玄関に怯え恐怖で神経が張り詰めていた美琴は、よく分からないまま自分がフワフワと浮いている事実にパニックを起こしていた。
「な、なッなになになに!?」
脱衣所に連れてこられた美琴は、もうどうしていいか分からないという風に頭を抱えている。
『ミコ!落ち着いて?』
「……濯ちゃん!??なんで私浮いてるの!?」
『シ――ッ。俺がこっちまで連れて来た。なんか怖がってたろ?ガンガン玄関叩いてるし。追い返してもいいのか?』
ぷかぷか浮いてる美琴の顔を覗き込む。
震える美琴を見て、正直腑が煮えくり返っているが、そんな感情を美琴に見せる訳にはいかない。
小さな声で優しくそう言うと、美琴は泣きそうになりながら、こくこくと頷いた。
『ん、じゃあ、美琴はここに入ってて。世界一安全な場所だ。』
洗濯槽は俺の本体なので擬態していても生物であり、口の中だ。見た目は機械だし変な匂いだってしないはずだが、主人を入れるとなると緊張する。
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