第13話-洗濯機の留守番1
俺がこの家に来て一週間が経った美琴は俺の事を大切に使ってくれている。
俺だけじゃない。美琴は物をとても大切に扱う。
爺さん婆さんと住んでいるわけでもないのに、ここで見る物はみんな一昔前の骨董品ばかりだ。
食器類も鍋や調理器具もどこで揃えてきたんだという程に古い。
製造が古いというだけで状態は良い物ばかりだが、可愛らしくはあるがデザインは五十年前によく見ていた物ばかりだ。
『古い物が好きなのか。』
……ごごごごご……がががが……ちゃぷ、ちゃぷ。
洗濯槽を回しながら、脱水槽から分身体の顔を出して頬杖を突いてそん事を考える。
当の美琴は仕事に出ており俺は一人きりだ。
前の家ではこの一人の時間に、この世界の事を学んでいた。最初は文字を家主の本や新聞、そしてテレビで学び、その次にこの世界についてを学んでいった。
特にテレビとは凄いもので、持続的なエネルギーに乗せた情報の供給、……これはラジオもだが、元いた世界にあれば、あの世界の人類もさらに繁栄するだろうと思った。ただ、この“電気”と呼ばれる持続力とパワーのあるエネルギーと同等の物を用意しなければならず、魔王クラスを使役するか封印し魔力を吸い取り各地に供給……くらいしか思いつかなかったので、考えるのをやめた。
今考えれば、それだとエネルギー役は俺になるだろうな。いやいや。そんな役目は絶対に御免だ。
本も新聞も好きだったが、テレビはそれ以上に好きで、この世界の時代劇にどハマりしたのは記憶に新しい。
この家も見て回りたいが、今俺は使役魔なので美琴の意にそぐわない事は出来ない。許可を取らなければならないのだ。
『暇だなぁ……。』
ズズズズ……じゅごご……ごろごろ……。
気付けば洗濯槽は濯ぎのために一度脱水を始める所だ。水を抜いてしまうと念力を使い、洗濯槽と脱水槽を開き、軽く水を絞りながら、脱水槽へ洗濯物を移す。
こんな事が出来るのは、美琴が出かけている間の洗濯を任せてくれたからだ。
洗濯ができるオバケとして認めて貰えたのだった。
『流石に洗濯機自体が魔物ってのは言えないけど。オバケって存在は都合よくて助かるな。』
分身体は洗濯槽に移り、脱水槽は中蓋を嵌めて蓋をパタンと閉めた。
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