第6話-洗濯機のお引越し2
古いのに、その古さが美しいと感じる程に手入れが行き届いている。そういえば、畳も張り替えたばかりのようだった。
『あのお嬢さんの家……なんだよな。』
年寄りと一緒に住んでいるのだろうか。
俺の隣の風呂場は、セメントとタイル張りで作られている。ユニットバスではない。五右衛門風呂というやつだ。
いやいや……やっぱり女の子が一人で住むような場所じゃないだろう。
もっとあるだろ、こう、高級じゃなくても、“れおぱるす”?とか!若者ってそういう所から始めるものじゃ無いのか!?
「あ、やぁっぱり!可愛いオバケが住んでたのね!」
風呂場に気を取られていると、いきなり話しかけられビックゥウ!!と身体が跳ねて、バタン!と蓋を閉じて洗濯槽の中に逃げ込む。
やばい。見られてしまった。こんな失態、タクミの時には無かった事だ。気配を感じなかったのだ。
何だこのお嬢さん!??
こんなにパニックに陥ったのはいつぶりだろうか。この先の事を必死に考える。
「おぉ――い。洗濯機のオバケさぁん。お――い。」
気配感じなかったとか、お嬢さんが執念深く俺を呼んでいるだとかは置いておいて、そんな事より!このお嬢さんが俺が魔物だと気付いてしまった事の方が大問題だ。
バレてしまったという事は、すなわち、洗濯機として使って貰えない事を意味する。
「聞いてまぁすか。オバケさぁん。」
この世界、特に日本には魔物なんて物は存在しない。俺は伝説として残る幽霊とか妖怪とかその類に分類されるんだろうが、そういった物が行き着く先は、寺か神社だ。
オハライをされるのだ。香を焚かれ、呪文を聞かされながら火炙りにされてしまうと、リサイクルショップのテレビで見て衝撃を受けたのを覚えている。まるで火炙りの刑のようだった。テレビで見れたという事は全国放送で公開処刑だ。絶対に嫌だ。
あのテレビでは、燃やされたのは勝手に動く人形だったが。勝手に動くのだから同類にされると考えていいだろう。
「オバケさぁん。怖くないですよぉ」
このまま無かった事にして黙っておこうか……それとも彼女の記憶を消して……、ああ!そうだ!この手があった!!
「もう、顔出してくれないなら、お姉さんが中を覗いちゃいますよぉ。」
俺はまたヒョコリと蓋から顔を出す。
『ご、ごきげんよう……お嬢さん……。』
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