第7話-洗濯機の挨拶
「わぁぁぁあ!!私、オバケは見るの初めてなの!」
『あ、あぁ。そうなんだ。』
日本人特有の栗色の瞳をキラキラと輝かせ、お嬢さんは大興奮だ。
そう言えば、お嬢さんの容姿をまじまじと見るのも初めてだった。
栗色のキラキラした瞳、髪は緩く巻かれたフワフワの長髪で、こちらも栗色をしている。幼顔だが母性を感じるおっとりとした美人、という印象だった。
フワフワとした雰囲気に、見ているこちらまで毒気を抜かれてしまう。
だが、俺としては普通の洗濯機でいたい。魔物がこの世界にいる事を知られては目立って仕方がないのだ。
すまないね。お嬢さん。
俺は、金色に光る目を細めて笑う。
『俺たちの挨拶は、相手の頭を撫でる事なんだ。良かったら触ってもいい?』
そう言うと、彼女はキョトンとしてまたにっこりと微笑んだ。
「オバケさんと交流できるの?じゃあ、あなた流の挨拶の後は、私流の挨拶をしてもいい?」
『ああ、いいよ。』
もっとも、その後なんてないのだけど。次の瞬間には君は俺と話した記憶は無くなっているし、俺はただの洗濯機だ。
「じゃあ、はい。どうぞ。」
『目を閉じていてくれるか?』
「わかったわ。儀式みたいね!面白いわ。」
俺の前に座ると、目を閉じて頭を差し出してくるので、俺は闇色の手を洗濯機から出してお嬢さんの頭に乗せた。
『お嬢さん、これから宜しく……。』
お嬢さんの、俺の正体に関する記憶だけ食べてしまえばいい。
俺の手がどろりと溶けて嬢さんの頭を包みはじめる。
すると、突然頭に乗せていた手が、パァンッ!!と弾け吹き飛ばされてしまう。
『ッ!?!』
この手は実体では無いので痛くはない。だが、敵意も殺意も何も感じないのに、いきなり消滅し掻き消えた腕を唖然として見つめる。
は……っな、なんだ……これ。
腕はすぐに修復されて元通りになる。しかし訳がわからない。
「……???」
なんだ、今の……?
唖然としていると、お嬢さんがチラリと私を見た。
「もう大大夫?」
『あ、うん。すまん。これで挨拶は終わり。……これから宜しく。』
内心苦笑しながらニコリと笑う。
するとお嬢さんは、ぱぁぁっと嬉しそうに笑った。
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