第2話-洗濯機とお嬢さん2

ガラスの向こうは桜並木が広がり、サワサワと枝を揺らしている。春の日差しは心地よくしばらく日向ぼっこをしていると、ショーウィンドウの前に人の気配を感じてうっすらと目を開ける。

するとフワリとした雰囲気のお嬢さんがこちらをガン見しているのを見てしまい、慌ててまた目を閉じた。


目といっても本体についている訳ではなく、蓋の隙間から顔を出す感じだ。洗濯機は身体で、頭や手などは闇に紛れた箱の中にある。普段はそれらは見えない。

この世界でいうならば、洗濯機に住むオバケ。そんな感じだ。


しかし、見られただろうか。蓋が一瞬動いてしまった。


「なに!?……あなた5000ッ……!?は!?」

おっとりとした声が裏返っていて、驚いているんだなという事は目を閉じていても分かる。座ったり立ったりしながら興奮気味に俺の痛み具合を見ているようだ。


面白いお嬢さんだ。


しばらくガラスにベッタリと張り付いて俺をみていが、意を決したように店に入ってきた。

「すみませ――ん!!そこの洗濯機欲しいのですが、動きますかー?」

すると奥から店主が出てきてニッコリと愛想笑いで答えた。

「ええ、動きますとも。お買い上げでしたら、送料は別ですが宅配しますよ。」

「とても助かります。最近引っ越したばかりで洗濯機探してたんです。」

フワフワとした話し方をするお嬢さんは、送り先の住所を書いているようだった。

「では、送料込みでこちらの値段になります。」

「はいはぁい。」

上機嫌で清算が終わると、お嬢さんは俺のところにやってきた。そっと触れられている感触がする。後ろから俺を撫でいるようだ。


「キミが来るの待っているからね。これからよろしく。」



その言葉に、胸の高鳴りのような感覚を覚える。

俺はまだ、この世界に居ても良いのだと、そう言われた気がして嬉しかった。


こちらこそ宜しく。可愛いお嬢さん。

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