魔王と勇者を喰らった最強ミミックは余生をOL♡の洗濯機として過ごしたい!

pasuta

第1話-洗濯機とお嬢さん1

古ぼけた店構え、店の前にはガラクタが積み上がり、大売り出しの旗が寂しくはためいている。


その店奥に、骨董品のような洗濯機が一つ、埃をかぶって置かれていた。洗濯機といっても、それは俺が擬態した姿だ。日本という国に、洗濯機に擬態するような生物は俺以外に居ないだろう。


俺は、異世界と呼ばれる場所から追放された魔物だった。


ぼうっと店主の移動する気配を感じる。

「ああ、この洗濯機も長い事売れ残ってるな……。そろそろ売れてくれんと場所取ってかなわん……。価格下げて前に置いといたら物好きが買っていくかね……。」

店の店主は俺に積もった埃をサッと払うと、黄色い紙に赤い文字で、『5000円』と走り書きをして俺に貼り付ける。

店の奥にあった俺は日の良く当たるショーウィンドウとは名ばかりのガラクタ置き場に日焼けした箱物と共に置かれたのだった。


はぁ。これでも50年前は最新型だったのだ。今でも俺みたいな二層式洗濯機は一部では活躍していると聞くが、一般的には全自動の"どらむしき"、というのが最新型らしい。ボタンひとつで乾燥までやってしまうという。洗濯物を干す手間が無いのは人間には良いのだろう。この世界の人間はアクセクと休む暇なく働いている。洗濯に時間を浪費するのが惜しいのだそうだ。


俺のような旧型で中古品の俺なんて買い手が付くはずもない。


このまま売れずに捨てられたら、その時はもうそのままゴミとして処理されるのも悪く無いと思っていた。洗濯機としては50年程だが、俺自身は900年という途方もない時間を生きていた。魔物としての自分よりもこの姿を気に入っている。だからこそ他の洗濯機のような最後を迎えたかった。

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