拒絶《ジェラルド side》①
◇◆◇◆
尋常じゃないほど怯えているベアトリス嬢の姿に、俺は内心頭を捻る。
何故、こんなに警戒されているのか分からなくて。
単なる人見知り……にしては、度が過ぎている。
これは明らかに僕を怖がっている様子だ。
でも、彼女にそれほど酷いことをした覚えはない。
まさかとは思うが、あの訪問で僕は恐怖対象になってしまったのか?
『もしくは、あの男に何か吹き込まれたか……』と思案しつつ、僕は内心焦りを覚える。
もし、この機会を逃せばベアトリス嬢とはもう一生接触出来なくなる可能性もあるため。
何としてでも、今ここで友人……最悪でも、知人くらいにはなりたい。
「あの、ベアトリス嬢」
出来るだけ優しい声色を心掛け、僕は一歩彼女に近づいた。
その途端、ベアトリス嬢は真っ青になり────腰を抜かす。
喉元を押さえるようにして後退る彼女の前で、僕は思わず頬を引き攣らせた。
これは……落とせないな。懐柔作戦は失敗だ。
何か別の手を考えた方がいい。
そう、例えば────今、ここでこの女を手篭めにするとか。
そんな血迷った考えが脳裏を過ぎり、僕は彼女へ手を伸ばす。
と同時に、吹き飛ばされた。
「っ……!?」
突然のことに驚いて対応出来ず、僕は扉に背中を打ち付ける。
『今、何が起きたんだ?』と思案する中、ベアトリス嬢は真っ青な顔でこちらを見つめた。
上手く事態を呑み込めずにいるのか、目を白黒させている。
恐らく、実行犯は彼女じゃないだろう。
警護の女性騎士は……まだ眠っている。
ということは、この部屋に────僕の知らない第三者が、居るのか?
『探知魔法まで使ってきちんと調べたのに……』と思案しつつ、僕はヨロヨロと立ち上がった。
その瞬間────後ろの扉が開く。
「「「ベアトリス(嬢・様)、一体何が……!?」」」
そう言って、部屋になだれ込んできたのは銀髪の美丈夫と金髪の青年だった。
『あれ?もう一人は?』と思ったものの、今はそれどころじゃないため直ぐに思考を切り替える。
思ったより、早かったな。しかも、公爵まで一緒とは……途中で合流したのか?
『あと、なんだ?そのキツネは』と思いながら、僕は男の胸に抱かれた小動物を見やった。
────と、ここで胸ぐらを掴まれる。
「何故、貴様がここに居る」
もはや貴族としての礼儀などどうでもいいのか、公爵は口調も態度も一変させた。
『私の娘に何をした』と威嚇する彼の前で、僕はゴクリと喉を鳴らす。
今までとは比にならないほどの圧に、思わず悲鳴を上げそうになった。
恐怖のあまり何も話せずにいると、公爵は真っ青な瞳に殺意を滲ませる。
「少し長引きそうだからベアトリスの顔を一度見ておこうと思い、こちらに来たが……もう我慢ならない。我々は即刻ここを立つ」
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