厄介なやつ②
「な、何……!?」
ビックリして思わず席を立つと、直ぐに明かりがついた。
おかげで、少しホッとするものの……私は辺りの光景を見て、固まる。
だって────警護のため残された女性騎士が、床に倒れていたから。
「ど、どうして……」
まさか、魔物の仕業?いや、それにしては随分と手が込んでいるけど……。
知性や理性のない生物だと聞いていた魔物が、このようなことをするとは思えず……困惑する。
────と、ここで黒いローブに身を包む人物が目に入った。
「あ、暗殺者……?」
「いや、違う。それよりも、もっと厄介なやつだ」
かなり小柄な侵入者を前に、ルカは軽く舌打ちする。
『そうくるか』と苦々しく吐き捨てる彼の前で、侵入者は深く被ったフードを取り払った。
「驚かせてしまい、すみません。僕は────第二皇子のジェラルド・ロッソ・ルーチェです」
ルビーのように真っ赤な瞳をこちらに向け、ジェラルドはお辞儀する。
「このように手荒な手段で訪問したこと、謝罪致します。申し訳ございません。でも、こうでもしないとゆっくり話も出来ないと思って……」
『あっ、騎士は寝ているだけです』と付け足し、ジェラルドは殺していないことをアピールする。
人畜無害な子供を演じながら。
でも、私にはこの世の何よりも恐ろしい存在に見えて……反射的に扉へ足を向けた。
とにかく、この場から逃げたくて。
ど、どうしてジェラルドがここに居るの……?まさか、
全く予期してなかった展開だからか、私は『話がしたい』というセリフも忘れて最悪の結末ばかり考える。
そして必死に扉へ向かうものの、恐怖のせいか上手く体を動かせず……逸る気持ちとは裏腹に、とても歩くのが遅かった。
そのため────
「あっ、お待ちください」
────あっさりとジェラルドに行く手を阻まれる。
出入り口を塞ぐような形で立つ彼に、私は大きく瞳を揺らした。
ど、どうしよう……?どうすればいい……?どうしたら、ジェラルドから逃げられるの……?
恐怖のあまり声も出せず、ただただ震えることしか出来ない私は今にも腰を抜かしそうになる。
────と、ここでルカが私を守るように前へ出た。
まるで、『お前は一人じゃない』と示すように。
「ベアトリス、大丈夫だ。お前は俺が守る」
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