父の説得①
◇◆◇◆
────魔道具の扱い方について、学び始めてから早一ヶ月。
グランツ殿下やルカ、時々父の力も借りて私は着実に成長していた。
と言っても、練習したのはどちらかと言うと武器に関する分野だけど。
「ベアトリスお嬢様、肩の力は抜いてください!もっと、リラックスを!」
五十メートルほど離れた場所からこちらを見つめるイージス卿は、身振り手振りでコツを教える。
それに従い、私は
弓矢はセットしていないので、普通のものに比べると大分軽い。
「そうそう!そんな感じです!では、弦から手を離してください!」
「え、ええ」
正直イージス卿目掛けて、弓を射るのは気が進まないが……これも練習なので、指示に従う。
すると、弦の動きに合わせて────半透明の矢が放たれる。
風の力を圧縮したソレは真っ直ぐ飛んでいき、イージス卿の剣によって切り裂かれた。
「大分、良くなってきましたね!次は動いている的に当てる練習と、連続で射る練習をしましょうか!」
『基礎はもうバッチリなので!』と力強く断言し、イージス卿は軽やかな足取りで走り出す。
時々フェイントなどを掛けながら。
い、いきなり難易度が上がり過ぎでは……?
『ちゃんと出来るかな?』と不安に思いつつも、隣に立つルカが何も言わないので一先ず弓を引いた。
動き回るイージス卿を目で追いながら、どんどん魔法の矢を放っていく。
案の定、一つも当たることはなかったが……いや、当たっても困るんだけども終始イージス卿に翻弄されっぱなしだった。
「私って、弓の才能ないのかしら?」
「いや、初めて数週間でこれだけ出来れば上等だろ。命中こそしてないけど、ちゃんと相手の動きを捉えているし」
毎回『あと一歩』というところで躱されている点を指摘し、ルカは呆れたように笑う。
お前は理想が高すぎるんだ、とでも言いたげな表情だ。
「それより、問題はあっちだろ。今日もめちゃくちゃ難航しているぜ」
そう言って、ルカは父の書斎を指さす。
釣られるままに視線を上げると、窓越しに父とグランツ殿下の姿が見えた。
何やら話し込んでいる様子の二人は、どことなく重苦しい雰囲気を放っている。
「公爵様がグランツの提案を尽く、却下している。あの分だと、精霊との接触はまだまだ先になりそうだぜ」
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