魔道具②
「そういう訳で、ルカ。ベアトリス嬢のサポートは頼んだよ。私は少し離れた場所に移動する」
『近くに居ると、成否が分かりづらいから』と言い、グランツ殿下は移動を始める。
去り際に五分経過したら魔道具を発動するよう言い残し、部屋を出ていった。
と同時に、ルカはこちらを向く。
「んじゃ、幾つか注意事項を話しておくな」
サポートを頼まれたからか、ルカは積極的に教える姿勢を見せた。
「まず、魔道具の発動中はずっと魔力を込め続けること。じゃないと、そのうちエネルギー不足で止まっちまうからな」
『ユリウスの魔力切れで中断された時みたいに』と語り、ルカは机の上にある水晶を見つめる。
「次に、魔力を込める時は少しずつゆっくりやれ。決して、焦るな。ベアトリスの場合は魔力量が桁違いに多いから、最悪魔力を貯蔵する部分が壊れてダメになる」
何事も程々にということを強調し、ルカはおもむろに天井を見上げた。
「具体的な量や速度は、そうだな……あのチョークくらい細い川が、緩やかに流れているイメージと言えばいいか?」
「あら、本当にちょっとなのね」
思わず口を挟む私に、ルカはコクリと頷いた。
かと思えば、頭の後ろで腕を組む。
「とりあえず、注意事項はこんなもんだな。他に何かあれば、その都度言う」
「分かったわ」
特に質問もなかったのでこのまま話を終えると、ルカは不意に掛け時計の方を振り返った。
「よし、そろそろ時間だな。魔道具に魔力を込めろ」
『ちょうど五分だ』と告げるルカに、私は首を縦に振る。
そして、ユリウスがやっていたように水晶の上へ手を翳した。
と同時に、少しずつゆっくりと魔力を注ぎ込んでいく。
チョークくらい細い川が、緩やかに流れているようなイメージ……。
ルカのアドバイスを反芻しながら、慎重に魔力を込めていると────水晶が輝く。
魔力の属性によって光の色は異なるが、今回は白だった。
『無属性の証なんだろうけど、凄く綺麗』と瞠目する私を他所に、対となるもう一つの水晶へ通信が繋がる。
その瞬間、グランツ殿下の顔が魔道具を通して見えた。
『おや?もう成功したのかい?もっと、時間が掛かるものだと思っていたよ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます