魔力コントロール①

「それって、ルカじゃダメなんですか?」


 姿の見えない彼ならこっそり出来るのではないか思い、私は直球で質問した。

すると、グランツ殿下は悩ましげな表情を浮かべる。


「この方法は繊細なコントロールを必要とするから、対象と接触しなきゃダメなんだ。つまり、今のルカでは出来ない」


「さっきみたいにお前の魔力を適当に刺激するだけなら、出来るんだが……魔力循環の正しい道筋を示し、お前の魔力を誘導するとなると難しい」


 『力になってやれなくて悪いな』と謝り、ルカはそっと眉尻を下げた。

凄い力を持っているのに何も出来なくて、歯痒く感じているのだろう。


「こうなったら、知識方面から攻めるしかないね」


 ────というグランツ殿下の言葉に従い、私はひたすら魔力コントロールの見識を深めた。

と言っても、グランツ殿下やルカの話をずっと聞いているだけだったけど。

でも、おかげで少しだけ……本当に少しだけ、魔力を動かせた。


「でも、これじゃあ全然ダメ……」


 目指すは魔力の循環。

今の私はひたすら魔力を溜めている状態で、冬眠に近い様子という。

だから、魔力を動かし行使するまでに凄く時間が掛かるらしいの。

だから、そのタイムラグを極限まで減らすために魔力を循環させ、常に使える状態にしておく必要があるんだって。

これは魔力持ちなら、誰しも通る道とのこと。


 ルカ達は『焦らなくていい』って言っていたけど、ずっとこのままだったらどうしよう?

せっかく、たくさんたくさん時間を割いて……知恵を絞ってくれたのに。


 自身の手を見下ろし、私はゆらゆらと瞳を揺らした。

自室に差し込む夕日を眺めながら、キュッと唇に力を入れる。


「……もう一回」


 『明日の講義までには出来るようになりたい』と考え、繰り返し繰り返し練習した。


 何となく、魔力を感じ取ることは出来ているの……ただ、動かすのが難しくて。

ルカやグランツ殿下からアドバイスはたくさんもらっているんだけど、こう……上手くコツを掴めない。

でも、もうすぐ何か掴めると思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る