魔力のおさらい③
い、いつの間に目の前へ……?さっきまで、廊下に居た筈じゃ……?
グランツ殿下と私の間に割り込むオレンジ髪の青年を見つめ、目をぱちくり。
『何かあったんだろうか?』と困惑していると、イージス卿が困ったように笑った。
「申し訳ありません、第一皇子殿下。公爵様より、お嬢様を殿方から遠ざけるよう言われていて……」
「でも、これは講義のためなんだが……」
『やましい気持ちなんて一切ないよ』と語るグランツ殿下に、イージス卿は眉尻を下げる。
「すみません。さすがに────皇族の腕は斬り落としたくないので、引き下がって頂けると助かります」
「ん……?えっ?斬り落とす?」
「はい。公爵様が『ウチの娘に触れた者は全て斬れ。例外はない』と言ってまして……」
「……」
おもむろに扉の方を振り返り、グランツ殿下は何とも言えない表情を浮かべた。
かと思えば、素直に手を下ろす。
「私はまだ腕を失いたくないから、ここで引き下がるよ。それにベアトリス嬢の魔力量だと、弾かれてしまうかもしれないし」
『無駄骨に終わるかもしれないことに腕は賭けられない』と主張し、数歩後ろへ下がった。
触らないという意思表示をするグランツ殿下の前で、イージス卿はようやく肩の力を抜く。
「じゃあ、俺はまた部屋の外に出ていますね」
「ええ、疲れたら遠慮せず休んでね」
「ベアトリスお嬢様こそ、無茶をなさらないでくださいね。公爵様はもちろん、俺だって凄く心配しますから」
「分かったわ。ありがとう」
こんな風に温かい言葉を掛けられるのは、まだ慣れてなくて……少し照れてしまう。
僅かに頬を紅潮させる私の前で、イージス卿は軽くお辞儀して部屋を辞した。
そのまま警備に戻った彼を他所に、グランツ殿下は自身の顎を撫でる。
「それにしても、困ったね。これじゃあ、魔力コントロールの実践が出来ない」
『参った』とでも言うように
「それって、ルカじゃダメなんですか?」
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