魔力のおさらい②

「ま、とりあえずお前には精霊師の才能があるかもってこと。確かめるのはもっと先になりそうだけどな」


「精霊と接触するには、それなりの準備が必要だからね。公爵にだって、話を通さないといけないし……」


「ある意味、ソレが一番の問題だよな。絶対、反対されそ〜」


 『とんでもない親バカだからな』とゲンナリするルカに、グランツ殿下は力なく笑った。


「まあ、頑張って説得してみるよ」


「おう。でも、ダメだった場合はこっそりやろうぜ」


 悪戯っ子のように微笑み、ルカは『三人だけの秘密だからな!』と小声で言う。

そんなことをしなくても、ルカの声は私達にしか聞こえていないというのに。

でも、こういうやり取りは凄く新鮮で楽しかった。


「何にせよ、精霊の方は一旦保留だね。当分の間は魔力コントロールと魔道具の発動練習に専念しようか」


 今出来ることを提示し、グランツ殿下はチョークを置いた。

と同時に、黒板の端っこへ移動する。

恐らく、見やすくするためだろう。


「まずは魔力のおさらいから」


 パンパンと手を叩いてチョークの粉を払い、グランツ殿下は左端に書いた図を手で示した。


「既に知っていると思うけど、魔力は自然から派生して出来た力だ。だから、自然豊かな場所であればあるほど強い力を使える。というのも、目に見えない力の欠片────マナが沢山あるから。私達はコレを体内に取り込むことで、魔力化しているんだ」


「まあ、魔力なしの奴らは酸素や二酸化炭素なんかと一緒に吐き出しちまうけどな。魔力へ変換するための力が備わってないから」


 でも、一応体内に取り込むことは出来るのね。

初めて知ったわ。マーフィー先生はあまり詳しく教えてくれなかったから。


 基礎中の基礎しか習ってなかった前回を思い出し、私は『結構身近にあるエネルギーなんだ』と考える。

────と、ここでグランツ殿下がこちらへ足を向けた。


「ベアトリス嬢の魔力は凄く豊富みたいだから、本来慎重にやるべきなんだけど、幸か不幸か害のない無属性。恐らく、暴走しても大して問題ないだろう」


 『ちょっと体調を崩すだけ』と言い、グランツ殿下は私の前に立つ。

と同時に、手を差し出してきた。


「そういう訳で────ちょっと強引にコントロールのコツを覚えてもらうね」


「早い話、実践だ。ベアトリスは既に魔力を探知出来るみたいだし、直ぐに扱えるようになると思うぜ」


 さっきのムズムズとした感覚を示唆しているのか、ルカは『俺の魔力に反応しただろ?』と笑う。


「まあ、物は試しだ。やってみろ」


「え、ええ」


 正直上手く出来る自信はなかったものの、やってみないことには何も分からないため、おずおずと殿下の手を取る。

────筈が、イージス卿に妨害された。

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