第二皇子の来訪②
「それに公爵様はお嬢様の居る場所へ、他人を寄せ付けたがりません。異性ともなれば、尚更」
『うっかり恋にでも落ちたら、血の雨が降る』と身震いし、ユリウスは強く手を握る。
自分は嘘を言っていない、と証明するみたいに。
「一体、何故公爵様が屋敷の門を固く閉じていると思います?一体、何故外部との接触を控えていると思います?一体、何故お嬢様を外へ出さないようにしていると思います?」
「わ、分からないわ……」
お父様の胸の内を聞くまでは、出来損ないの私を恥ずかしくて外に出せないのかと思っていたけど……今はそうじゃないと確信している。
だからこそ、お父様の考えを理解出来ない。
この生活に不満などなかったため、特に深く考えたことはなかったが、改めて言われてみると不思議だ。
『お父様の狙いは何なんだろう?』と首を傾げる私に、ユリウスはクスリと笑みを漏らす。
「全部────お嬢様を守るためですよ」
「!!」
「だから、ここは絶対に安全な場所じゃないといけないんです。不純物は受け入れられません」
『勝手に招き入れたら、それこそ怒られます』と肩を竦め、ユリウスは腰を折った。
下から見上げるようにしてこちらを見つめ、背筋を伸ばす。
「では、もう一度質問しますね────ジェラルド殿下を皇城まで送ってきても、よろしいですか?」
とても穏やかな声で問い掛け、ユリウスは『ただ頷くだけでいいんですよ』と囁く。
その優しさが……厚意が嬉しくて、私は胸がいっぱいになった。
い、いいのかな?本当に追い返して……でも、ユリウスの言う通り、お父様の許可なく勝手なことは出来ないし……。
「ここは素直に甘えておけよ。中身はどうあれ、お前はまだ子供なんだから。目いっぱいワガママを言っていいんだ」
ユリウスの隣に立って腕を組むルカは、『いいから、頷いておけ』と促す。
それが最後の一押しとなり、私は大きく首を縦に振った。
「ええ、是非そうして」
「畏まりました」
恭しく
そして素早く踵を返すものの、何かを思い出したかのように足を止めた。
と同時に、顔だけこちらを振り返る。
「あっ、手を握ったことは公爵様に言わないでくださいね!首を切られちゃうので……もちろん、物理的に」
ブルリと震えて両腕を摩り、ユリウスは『絶対、秘密ですよ……!』と念を押す。
まるで小動物のような怯えように、私は目をぱちくり。
お父様はそんな事しないと思うけど……でも、ユリウスがそんなに怖がるなら言わないでおこう。
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