自己紹介②
昨日、言っていたことかしら?もし、そうなら……。
ギュッと胸元を握り締め、私は緊張で強ばる体に鞭を打つ。
今度は私が勇気を出す番よ、と言い聞かせながら。
「ルカ、未来で私を殺したのは第二皇子ジェラルド・ロッソ・ルーチェよ」
「!!」
まさか、こちらから口火を切るとは思ってなかったのか……それとも元凶の正体が予想外だったのか、ルカはハッと息を呑む。
「それ……マジか?」
「ええ」
「嘘だろ……」
現実から目を背けるように俯き、ルカは額に手を当てた。
が、直ぐさま体勢を立て直す。
「正直、ベアトリスを殺す意味が分からないが……」
「私を見ているとイライラするから、殺したそうよ。あと、皇位をもう手に入れたから用済みだとも……」
「だからって殺すか、普通……」
『馬鹿かよ』と吐き捨て、ルカは天井を仰ぎ見た。
かと思えば、大きな溜め息を零す。
「案外、感情的なやつなんだな。闇落ちした公爵様を宥める件で協力した際は、冷静沈着に見えたんだけど」
「えっ?会っ、たの……?ジェラルドに」
「ああ。と言っても、数回だけだけどな」
『公爵様の件で一番頭を悩ませていたのは、あいつだし』と言い、ルカは肩を竦める。
自業自得の結果を迎えていたジェラルドを嘲笑っているのか、表情はちょっと呆れ気味だった。
『あいつ、内心ビクビクしていただろうなぁ』と零す彼の前で、私は震える手を強く握り締める。
「じゃ、じゃあ……逆行の件はジェラルドも知っているの?」
もし、そうなら当然……私を警戒する筈。
もしかしたら、全てが明るみに出る前に何か手を打ってくるかもしれない。
前回の教訓として、殺しはしないだろうけど……脅迫とか、洗脳とか汚い手は使ってくると思う。
だって、ジェラルドは『イライラするから』という理由だけで人を殺せるサイコパスだから。
死の間際に見た冷たい眼差しを思い出し、私は竦み上がった。
不安を押し殺すように唇を噛み締める私の前で、ルカは膝をつく。
「大丈夫だ────あいつは知らない。協力者の二人は別に居る」
下から覗き込むようにしてこちらを見つめ、ルカは明るく笑った。
『だから、安心しろ』とでも言うように。
「それにたとえ、協力者が敵になったとしても────俺はお前の生存と幸せを優先する」
「えっ……?い、いいの……?」
「ああ。俺の目的はあくまで、世界の滅亡を防ぐことだからな」
ハッキリとした優先順を話し、ルカはおもむろに立ち上がった。
かと思えば、風魔法でシーツをすくい上げる。
「とりあえず、話は分かった。こっちで対応するから、ベアトリスはさっさと寝ろ」
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