第37話 雨乞い
「あの山の反対側はカミエル王国なんですよね、あっちでは雨が降っていましたけれどこっちに来ると一変して、カラカラ天気なので変だなと思っていたんですがカミエル王国とあまり仲良くないと聞いていますが実際はどうなんでしょうか」
「ちょっと待って、あなたはまるで空を飛んで来たように聞こえるのだが……」
「はいその通りです。飛んできました。あの雨雲をこちら側に転送したら良くないかと思ったのですが、あちら側が大雨なのは何か理由が有っての事なのかを知りたいのです。下手に勝手にこっち側に雨雲を転送したら何か問題になったら嫌なので」
「雨雲を転送するなんて考えてもみなかった。あっちのギルマスにその辺を訊いてみるよ。冒険者ギルドは国の支配下では無いから結構正確な情報を得られると思うぞ」
そう言ってギルマスのジョーイさんは手紙を書いてマジックボックスに入れて転送していました。
「あのうユイ様、町中の人たちがお水を求めて殺到しています。
何とかなりませんか?」
受付にいた職員の女性が言ってきました。
「カミエル王国から返事が来るまで私はあっちで水の補充を行っていますので、何か分かったら教えて下さい」
「うん、了解だ。済まんがそうしてくれ」
この町の人口は約2000人。飲み水だけならワイン瓶に入ったものを配布すればよいのでしょうが、炊事用お風呂用の水を考えると、やはり井戸が復活しないと
なので私は家々の井戸に水漏れ防止の結界を張ってそこに井戸
いっぱいに水を補充して回ることにしました。
細いホースだけでは時間が掛かり過ぎるので消防用ホースの太さのホースをイメージして日本の水道局の給水施設から水をこちらの井戸に転送していきました。
雨を降らせても地下水になって井戸が復活するまで時間が掛かるので思い付きました。お隣の国の地下水は降り続く雨によって満タン状態になっているものと思われます。
なのでお隣の地下水脈をこちらの地下水脈に接続してみようと思います。
やり過ぎて、あっちの地下水が枯渇しないように気を付けながら接続可能な地点をサーチして転送魔法でこちらの地下水路に水を転送しました。初めは水が枯渇した水脈から出て来る水は濁っていましたが直ぐに澄んだ飲料水に変わりました。
これで生活用水は確保できましたが畑や森林地帯の土の水分補給が出来ません。どうしても雨が必要です。
そんな中カミエル王国から回答が来ました。あちらでは雨の降り過ぎで土が過湿になっていて困っているということです。雨雲が転送出来るのであれば、是非実行して欲しいということでした。
翌日私は雨雲転送を実行することになりました。
ギルド前に行くと沢山の町の人が集まっていて、何やら私を拝み、雨乞いの祈禱をしていました。
(私は神様じゃ無いわ。拝まないでください)
そして私が空中に浮上すると人々の歓声は最高潮に達しました。
私はそのまま垂直に6000mほど上昇してそこから水平にカミエル王国に向って飛びました。山の頂上付近に来たらこの前は感じなかった変な抵抗を感じました。
なにこれ?結界?ひょっとしてこの結界らしきものが雨雲のピーチ王国側への移動を妨げていたのかしら?
結界の規模を探知すると約1000kmの長さで高さ10kmの結界だと判りました。
だれが何の為にはったのでしょう?
少なくとも2年前には張られていたと思われます。
しかしながら人間が魔法で張っているとは考え難いです。
となると魔道具が設置されている可能性が高いです。
私は山の稜線近くまで高度を落して魔道具らしきものが無いか探しながら移動しました。
国境線沿いに張られた結界の左右のほぼ中央にそれは有りました。
直径10㎝程度の水色の球体です。とても強力な魔力が保存されているみたいです。
結界を目に見えるようにする為に赤く色を付けました。
この色が無くなった時が結界が消滅した時です。
球体に魔法で干渉すると弾かれました。
一体誰がこんなものを仕掛けたのでしょうね。何の目的で?
ひょっとしてピーチ王国とカミエル王国両方に敵対している国とか人間が居るのでしょうか?
その詮索は後ほどジョーイさんに確認して頂きましょう。今はこの結界を何とかしましょうね。
鑑定を最大魔力で行うと水龍の宝珠と出ました。
龍です。東洋の蛇みたいな胴体を持ち手足が有るあの龍です。
この宝珠は龍が前足で掴んでいるあの宝珠です。
とにかく宝珠が弾き返せないほどの強力な魔力を込めれば壊せるのでは……
試してみました。クラクラっとめまいがするほど魔力を投入しました。パキンと音がして宝珠は割れて粉々に砕け散りました。
結界も消えました。今です私は雨雲をピーチ王国の方へ転送しました。
カミエル王国側は日が差して虹が出てキラキラ輝いています。
一方ピーチ王国では待望の雨が降っています。
さて、町に帰りましょう。粉々になった宝珠の欠片はすべて回収して錬金術で復元します。その際私の操作で雨が降ったり晴れたり曇ったりコントロール出来る様に改善しておきました。
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