第33話 ケルト王子様の治療

 湖の畔をぐるっと回ってマルシェの町に入りました。こちらから見るお花畑は湖を挿んで霧が掛かると神秘的な景色になっていっそう美しさを増すそうです。

 病気療養にはうってつけの場所ですね。


 クラリス王女様のおばあ様とケルト王子様が暮らすお屋敷に

到着しました。

「まあまあ、クラリス行ったり来たりで大変だったわね」

『おばあ様こちらがお兄様の御病気を診て下さる仙女ユイ様です。お兄様はお部屋ですか?」

「ユイと申します。よろしくお願い申し上げます」

クラリスの祖母のミンティーよ。よろしくね。セルフィー、ケルトのお部屋に案内してあげて」

「ハイ、奥様」

侍女さんのセルフィーさんの案内でケルト様のお部屋に入りました。


 ケルト王子様は19歳とお聞きしております。金髪の色白の(多分貧血による)顔色です。

「鑑定させて頂きます」


(こ、これは!?)

心臓に生まれつきの欠陥があるようですね上級ポーションだけでは一時しのぎにしかならないでしょう。


私は鑑定結果を告げるために皆様を室外にお出ししてミンティー

様、クラリス様にお話しました。

お抱え医師のゾルザルさんもいます。


「鑑定しましたところケルト様は心の臓に欠陥があるようです。

私が持っているこの上級ポーションで一時的には貧血を改善出来ますが完治させる為には特級ポーションを飲ませる必要があります」


私は医師のゾルザルさんに上級ポーションを渡して鑑定して頂きました。密かにゾルザルさんにも【鑑定】スキルがある事を確認していました。

「おおー!これが上級ポーションですか!はじめて見ました。確かに強力な聖属性の魔力に溢れておりますなあ。奥様これは素晴らしいポーションですぞ」

「特級ポーションとは何処に存在しているのか判りますか?」

ミンティー様がすがるようなお顔で尋ねて来ます。

「お庭の片隅を貸していただければそのポーションの薬草を育てます。2~3日で作成出来ます。ご心配ならこのお部屋で上級ポーションを作ってお見せ致します。いかがなせれますか?」


「「ええ、それは是非拝見させてください」」

ミンテイー様とゾルザル様のお声がハモりました。


私は皆さんの杞憂を払拭する為に制作してご覧に入れました。

容器や道具を浄化魔法で消毒するところから始めます。

薬草も鑑定していただきます。ポーションの味付け用に育てた

ブドウ【シャイングリン】を1房出して自分で1粒たべてみせて

味と毒でないことを確認して戴きます。

「凄く美味しいブドウですね」

「この薬草は上級ポーション用の【オル魔草】ですか?一体どこでこれを手に入れられたのですか?」

「私の住居の有るフアースト迷宮に有る森です」

「な、なななんと、大迷宮王国に存在したと言われるあのフアースト迷宮にお住まいだったとは!正に仙女様ですなあ!」


聞いたことも無い地名や薬草名などについて皆さんがゾルザルさんに質問しています。

その間に材料をジューサーに入れて聖水を投入するとそれにもゾルザルさんが反応します。質疑応答はゾルザルさんにお任せして

私はコンロと土鍋を取り出して加熱して魔力を注入していきます。薬液の色が変わったところでコンロの火を止めて冷まします。

 薬液を濾過して瓶に詰め替え封印します。


「どうぞ鑑定なさって下さい」

「ふむ、確かに上級ポーションです。ちょっと飲んでみても宜しいですかな?」

「はいどうぞ」

「では」

ゾルザルさんは驚いた顔を見せます。

「おおおお、治った治った、先ほどまでの歯の痛みが無くなった。腰の痛みも膝の痛みも無くなって、肩も回る。視力も回復しましたぞ!!」

「ゾルザル先生何だか顔のしわも消えてシミも消えたような」


 「その上級ポーション私にも頂けませんか?勿論お代は支払いますよ」

皺シミが消えて腰痛が消えたと聞いてミンティー様が喰いつきます。お年を召した女性が気になるところが改善したのを目の当りにしたら黙っては居られないでしょう。

ミンティー様に1本お渡ししてケルト王子様にも飲ませる許可を

頂きました。部屋に戻って治療致しました。


ケルト様は元気になられましたがやっぱり心臓の欠陥は治りきっていません。

「まだ完全に治っていませんので激しい運動はお控えください」

「はい、判りました仙女ユイ様」


さあ、お庭に特級ポーション用の薬草を創造して植えましょう。


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