第18話 日本舞踊とクラシックギター
着物を着た私に私の故郷の伝統的な踊りを見せて欲しいとリクエストされて私はラジカセに日本舞踊のカセットテープを入れて再生します。琴の音色と笛、鼓の和の音楽に合わせて扇子を小道具にして柔らかに、たおやかにあるいは静かにそして激しく踊ります。足元は草履は脱いで
これで帰れるかと思ったら国王陛下妃殿下第1王子殿下第2王子殿下の4人でバンド演奏会が始まりました。皆様楽器もお得意でした。
少し音程が外れる所も含めて、楽しい演奏会でした。
「ユイ様、ユイ様は何か楽器の演奏はなさいませんですか?
わたくし聴いてみたいですわ」
「僕も」「我も」「私も」「あたちも」
国王陛下ご一家の無理強いで、私も楽器演奏することになりました。
周りを見回してみると私が演奏出来る楽器が有りません。
こうなったら仕方ありません。病気になって演奏できなくなっても捨てられなかったクラシックギターを収納から取り出して
弦が傷んでいないか確認します。調律笛で音合わせをします。
良かった異常無いようです。
「では、私はギター演奏をします。曲は【アルハンブラの思い出】です」
クラシックギターを習った人が1度は楽譜を見ずに最後まで演奏出来る様になりたいと願うであろう全曲メロデイーをトレモロ奏法で演奏する【アルハンブラの思い出】を一生懸命演奏します。異国情緒溢れるこの曲の旋律の美しさを皆様にお届けできたと思います。
拍手大喝采頂きました。
「いやー実に美しい曲でしたわ。それにしても面白い演奏方法ですのね何という楽器ですの?」
と、御妃殿下。
ギターと言います。このような楽器はこの国には無いのでしょうか?」
『無いわねえ、ユイ様お願いです明日宮廷楽団の者を呼び寄せますので、今日はこのままお城にお泊りになって、明日楽団の
皆に聞かせてやって下さいませんか?」
心配していた通り今夜は帰れないようです。
翌日朝食には果実たっぷりのサラダとツナマヨパンを提供致しました。幼い姫君の為に蛸さんウインナーを作ってあげようと思いましたが、誰もタコを見たことが無いんだそうでしたので諦めました。
本日はツナマヨパンが大好評でした。
リンゴ、イチゴ、バナナ、トマト入りのサラダも皆さん残さず食べて下さったので、実際に作った調理場の皆様も感激しておりました。次は自分たちの国で採れる果実を使って作ろうと張り切っておられます。
でも1番活躍したのは胡麻ドレッシングなので、私は料理長さんに1000本進呈しておきました。時間停止付きのマジックボックスが国から支給されておりましたので、賞味期限の心配は無いでしょう。でも、パーテイーが有る度に使っているとあっと言う間になくなってしまいそうです。
バイバイシテイーの商業ギルドに、連絡しておいて頂ければ月1回は訪れるつもりだと伝えました。でもその時は実費を戴きますと忘れずに言って有ります。お値段は交渉の上でね。
「楽団の皆様が御揃いです」とライリンさんが呼びに来ました。
音楽堂に案内されました。音響効果に配慮された作りになっているとお聞きしています。なるほど壁には厚い布が張られているようです。エコーが無いと、素人の私の演奏など聞くに堪えない物になるんじゃないかと心配になります。
杞憂でした。演奏を始めると適度なエコーが掛かって気持ち良く演奏出来ました。
【アルハンブラの思い出】の演奏を終わると今のとは違う演奏方法は有るのかとか、使っている弦について質問の嵐でした。
今使っていたのはナイロン弦でこの世界にはまだ存在していないこと。その代わり、スチール弦を張ったギターに変えて音色の違いを耳で確かめて頂きました。
「うむ、この弦なら楽器制作工房に開発依頼すれば作れるようになるかもしれないな」
指揮をなさっておられた楽団長のヘルツさんが頷いています。
私はこの後【禁じられた遊び】とかフラメンコギターの演奏を披露して調子に乗ってピックを使った演奏方法やコードをじゃかじゃかかきならしてみせたり、とうとう【影を慕いて】の弾き語りまでしてしまいました。お恥ずかしい……
「おおーなんと楽器を演奏しながら歌を歌うとは、儂の音楽人生ではじめての経験ですじゃ。このギターという楽器には無限の可能性を感じますぞい」
と、ヘルツさん。異世界の住人をも魅了する古賀メロデイーは偉大です。
その後はこの世界でも楽譜が有って各楽器にも入門書が有って販売されていることを聞きました。
最後にこの国の音楽を聴いて、耳コピーでメロデイを覚え、コードを探って合同演奏会を行いました。
凄く楽しかったです。午後は商談タイムです。
「ギターというこの楽器素晴らしい。余分な楽器は持っていませんかな。是非にも譲っていただきたいのですが」
国王陛下のご依頼に応えるべく、ナイロン弦付とスチール弦付を各2つずつ複製してお譲りしました。代金はこの国の平均年収の3倍でした。私が要求したのではありませんよ。向こうから言ってこられたのです。尤も私も固辞しませんでしたけれど。
ギターを楽器製作工房で完璧に複製して売り出したところ、国中のミュージシャン達から予約が殺到して瞬く間に国中に広がって
一部では私の事を【ギター演奏の母】などと呼んでいることを、数年後に知りました。穴があったら入りたいです。
ところで、楽団長のヘルツさんが商談中ちょくちょく席を外すのでどうしたのかと国王様陛下にお聞きしたところ、なんでも数年前からおしっこが近くなって困っておられるとのことでした。
そこで私は2本のポーションを取り出します。瓶に張られた紙に
1本は【頻尿、夜間尿用ポーション】と書いてあり、もう1本の瓶には【腰痛、膝痛、加齢による節々の痛み用】と書いてあります
これには同席していたご高齢の宰相様が食い付いて、国中の薬屋で入手出来るようにと熱弁を振るっておいででした。ご自身も
どちらかに身に覚えがあるようです。
明日は宰相様同行の上、商業ギルドに行くことになりました。
宰相様とヘルツさんにはプレゼントしておきました。
効果絶大でした。そののちヘルツさんは席を外すことなく、
宰相様は屈伸運動をして微笑んでおられました。膝が痛かったのですね。
次から次に色んな商談が持ち込まれ、バイバイシテイーに帰れたのは、それから5日後の事でした。
帰りは王国に来た時のメンバーが揃いました。
「御迷惑じゃ無ければ是非送らせて下さい。出来ればでいいのですが、ユイ様の家に泊らせていただいて、ユイ様のお料理を食べさせて頂きたいなと存じまして……」
ベルトさんが申し訳なさそうに懇願してきます他のメンバーも
目を潤ませて頷いています。餌付けしてしまったのですね。
責任取りましょう。
御妃殿下や王子殿下方が羨ましそうなお顔で見送って下さいました。
送ってくださった皆様が御帰りの時には、お土産を持って行っていただきましょう。
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