第17話  ダンスパーテイー

夜のパーテイーが始まりました。

最初は大学卒業式に着た着物袴セットを着ています。


桜色の桜の花を散らした素敵な着物です。二尺袖に黒の無地の袴

白足袋に草履、髪飾りもお花です。

皆さんの注目を集めてしまいました。

御妃様の瞳がキラキラ輝いています。本当にフアッション好きなお方なのですね。

なにかに質問されてきます。お陰で他の御婦人方が集まって来ないので助かります。

ダンスが始まりました。この世界のダンスがどんなものか判らないので、壁の花に徹しようと思っています。草履だと踊りにくいですし。


会社員時代は普段は事務室で事務作業をしていたのですが、勤続年数が長いので扱っている商品について詳しくなっていて、お得意様の質問や苦情処理に引っ張り出されることが多くなって、その会社のパーテイーに御呼ばれされることが有るので、社交ダンスはそこそこ踊れるようになっていました。もう10年以上踊っていないのですが。スローなテンポの曲なら何とか踊れそうです


私は御妃様に断ってドレスに着替えに引っ込みました。

メイドさん達のお勧めで、私の私物のパーテイードレスに着替えました。淡い藤色のロングドレスです。靴はお借りしました。

ダンスに誘われるだろうから、滑って転ばないようにヒールもあまり高くない物です。アクセサリーも用意して頂いたものです


まさか、まさかです。私はたった今ダンスに誘われています。そのお相手が第2王子のステフアン様です。今年15歳。成人なされたばかりなはずです。

でもどうして私?他に沢山の貴族様の綺麗なお嬢様方が、目をギラギラさせて、王子様のお相手になろうと頑張ってらっしゃるというのに……

もしや、お昼の御飯で餌付けしてしまった?


困って御妃様の方に目をやるとにっこり微笑んで頷いています。

「踊れ」って言ってるのでしょうか?

「ユイ様、どうぞお願いです。僕と踊ってください」

周りのみんなの視線が痛いです。このままではなんか不味い。

丁度、私にでも踊れそうなスローな曲になりました。


「お願いいたします」

私は王子様のお手に自分の手を置きます。

王子さまはニッコリ微笑んで私の手を握ってリードしてくださいます。

(この方、凄く上手)

知らないステップなはずなのに、転びそうになることも無く、王子様の足を踏むこともなく1曲踊り切れました。

私はホッと息をつきます。


次の曲に入りそうなその時、道中御一緒だったベテイさんが来て「ユイ様、御妃様が次のドレスをご覧になりたいと申しておられます。ステフアン様、ユイ様をお借りしても宜しいでしょうか?

」と、言いました。御妃様の方を見るとにこやかに手を振っておられます。

「うむ、母上がお望みなら」

ステフアン様はそうおっしゃられて離れてくださいました。

私は御妃様に会釈して着替えに引っ込みました。


今度のドレスは御妃様が、ベルトさんから聞いた私の印象で選んでくださった、明るい赤系統のフリルの沢山付いた可愛いドレスです。やっぱり私の印象は子供っぽかったようです。

アクセサリーも全て替えました。

豪華な宝石のネックレスと、髪飾りです。イヤリングは有りませんでした。この世界では耳飾りの習慣はないのでしょうか、どなたもイヤリングもピアスも着けていません。


「イヤリングははずしたほうが良いかしら?」

ベテイさんとライリンさんに確認すると

「とんでもないです。出来るならばユイ様がお持ちならまた別のイヤリングをお着けになって欲しいです。初めて耳を飾るおしゃれに皆さん感激しておられます」

「そうです。次のパーテイーの時には、皆さん競ってお着けになってくることでしょう。断言できますわ」

「そ、そうですか」

 私は、自分の持っている中で1番高価な、しかし今着ているドレスに似合っているデザインのダイヤのイヤリングを装着しました。靴も用意されたものに履き替えてパーテイー会場に戻りました。


「ユイ様、私の選んだドレスを着て下さったのですね、うれしいわ。良く似合っていますし、今度の耳飾りもお綺麗です」

御妃様に喜んで頂けました。


すると今度は第1王子のブルーム様からダンスのお誘いをうけました。

「良かったら踊ってあげて下さらないかしら」

御妃様のお声がけに逆らう訳にもいかなくて、ブルーム様のお手を取りました。

曲が始まりました。【キューバンルンバ】によく似ています。お色気たっぷりに踊る大人っぽいダンスです。

(踊れるかしら?)

迷っている暇も無く、ブルーム様のリードでクルクル回されて、付いて離れてのけ反って、何とか1曲踊り終えました。

「キャー凄い踊りでした。ユイ様、色っぽい」

「凄い凄い、ブルーム王子様のリードに負ける事無く、でも出しゃばらない、完璧な踊りでした」

なんか褒められています。次々に、別の男性が誘いに来ようとしていますが、御妃様のお言葉で、諦めて下さいました。

「ユイ様、最後にユイ様の誕生なされたお国の伝統的な衣装を着て見せて下さいな。ベテイとライリンから話を聞いておりますのよ、とってもお美しいお着物だとか」

2度のお色直しのつもりが4度着替えることになってしまいました。

私は皆さまに頭を下げて着替え室に戻りました。


今度の衣装は30年ぶりに着るお振袖です。精神年齢50歳でも独身だから振袖でも大丈夫ですよね。

袴の時もそうですけど着物の着付けは自分でも出来ますけれど、人に着付けて貰う方が早くて綺麗に仕上がります。


自分がもう一人いて、自分を着付ける魔法があればと考えて着付け魔法を作ってしまいました。

たった5分で着付け完了です。


会場に戻ると、予想以上の大反響です。大輪の花が散りばめられた華やかな振袖は皆さんの興味を引き付けて止まないようです。

今夜無事に宿に帰れるでしょうか心配です。





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