第12話 ポーション作成を凝視される
今は商業ギルドに来ています。ポーションを売る為には
試験を受けて、合格しなければいけないのです。
そりゃそうですよね。人様の健康、時には命を左右する
代物なのですから。日本でも薬を扱うには、薬剤師とか
医師免許が必要で、薬を製造して販売出来るまでには
厳しい規則に則って、臨床試験とかに合格しなければ
いけないとか様々な制約が有るらしいですし
その点この世界ではポーションと薬では違うらしく
ポーションは薬とはみなされないらしいのです。
それでも鑑定師に鑑定されて合格しなければいけない
のだそうです。
ポーションは魔法具扱いされているのですね。
試験会場には商業ギルド長50代位の女性でライラさん
副ギルマスのカキフさん、鑑定士の男性と女性
冒険者ギルド長のトラッドさん、冒険者ギルドの
専任鑑定士さんの男性、
それに医師のアカヒさん、宮廷魔導士のベルトさん
アシスタントの女性の9人が揃っています。
「それでは私の上級ポーションの作成手順をお見せします」
私はテーブルの上に上級ポーション用の薬草【オル魔】を
取り出して、
「この【オル魔草】をちぎって普通は薬研で磨り潰すの
ですが私は時間短縮のためにジューサーに入れ、薬汁を
取り出します。ですがこのままだと凄く不味いので、
フアースト迷宮産の葡萄の実【シャイングリン】を1粒
入れてミックスします」
私はアシスタントさんにお願いして小皿に【シャイングリン】を1粒ずつ乗せて参加者全員に配って頂きました。
「どうぞ味見なさってください因みにこれには薬功は有りません」
「ん、な何だこれは、途轍もなく濃厚な甘さと香りのブドウだ」
「これは国王様に召し上がっていただくに値する果実だぞ」
などと、ブドウが大好評ですが今はポーション作りが
メインなのでジューサーを回します。ジュースになったところで
土鍋にジュースをあけ、聖水を目の前で作り出して鍋に入れます。
「ちょっと待ってください今のは聖水ですか?」
魔導士さんが質問してきます。
「そうです。私は聖属性魔法も使えますので。普通の水や
魔法水よりも効率良く薬草の薬功をひきだせますから聖水
を使用しています。あらかじめ器具類は浄化魔法で消毒
して有ります」
次にカセットコンロを取り出して鍋を加熱します。皆さんは
コンロにも関心を寄せています。
(なんか実演販売している気分)
「一度沸騰させたら弱火にして80度位の温度で煮出します。
料理に使う温度計で水温を測りながら説明します。
ゆっくり、丁寧にかき混ぜながら魔力を注入します。色が
透明がかった鮮やかな青に成ったら火を止めて冷まします。
その間に不純物が混ざると腐敗しやすいので、濾過して
綺麗な液体にします」
私がドリップコーヒーの濾過用器具を取り出して濾紙をセットすると皆さん、それにも反応します。
冷めた薬液を濾過していくと本当に鮮やかな透明感の有る青に
なりました。
私はそれをメモリの付いたスポイトを取り出して100㏄ずつ
小瓶に入れていって、コルクの蓋をして消費期限1年に固定する
魔方陣を印刷した紙を貼って封印します。
「これで、上級ポーションの完成です。尚、中級ポーション
はこれを倍の量の聖水で希釈すると中級ポーションの出来
上がりです。初級ポーションは、中級ポーションに聖水を
10倍加えてしっかりと混ぜ合わせると完成します。
どうぞ完成品を鑑定して見て下さい」
「間違いなく上級ポーションです」
「はい、間違いないですね」
「確かに最高級の上級ポーションですなあ」
「鑑定士さん方のお墨付きが出たところで、
皆さん試飲なさって下さい。持病をお持ちの方は効果を
確認なさって下さい」
「おお、これがポーションの味だとは信じられない
あのブドウのおかげでまろやかな飲みやすい甘さになっている」
「素晴らしい!持病の腰痛が噓のように消えている!」
「ワシは歯痛が無くなった」
私は偏頭痛がしなくなったわ」
「俺は視力が戻った」
俺は魔物にやられて動かなくなっていた片腕が動くぞ!
15年前の古傷が治るなんて、有難い有難い」
皆さんに上級ポーションである事を認めて頂いたところで
私は中級ポーションと、初級ポーションも取り出して
3人の鑑定士さんと魔導士さんに鑑定して頂いて品質に
問題ないことを確認させて、言いました。
「私は今日初めて山から下りて来た田舎者です。
これらのポーションを買って頂けるのか代金はどれほどの
ものを戴けるのかを教えてください」
皆さんで協議している間に余分な器具類を収納し片づけます
「あ、それ!」
薬草クズをしまった時誰かが言いました。
私はその生ごみを錬金空間で乾燥圧縮して丸薬に加工しておき
ました。
丸薬にしたものはポーションでは無くなって、薬に認定される
のではと思っていたから先ほどは出しませんでした。
「これは飲むだけですか?怪我の患部に振りかけて治すとか
は出来ませんか?」
「飲む専用です。下手にこれを怪我に振りかけたら残っている
生の薬草分が腐ってしまうおそれが有るので、絶対におやめ
ください。ただ、ポーションで患者さんの唇を濡らすと飲める
まで回復するはずですので、そうしたら飲ませてあげて下さい」
「おお、なるほど。それでか、昔勇者パーテイーでケガ人に
ポーションをふりかけたらその時は治ったが後々塞がった傷口
の内部から筋肉が腐って来たと言う話を聞いたことがある」
医師のアカヒさんが言いました。
「勇者さんていたんですか?」
「ええ、今から700年前の勇者パーテイーの活動日記に書い
てあった筈です」
「試したことは有りませんが、錬金術でポーションの有機物を
除去して有効エキスだけ取り出せれば振りかけるだけで治せる
ポーションは作れるかもしれません。お高くなるかと思いますが
試験して見て出来るようなら特注品という形でお売り出来るかも知れません」
「あのう、薬功を抽出した残りは捨ててしまうのですか?」
またもや医師のアカヒさんの質問です。熱心な方です。
「ええと、錬金術でこうやって、乾燥圧縮させて丸薬にしてみました。効き目の程は実験してみないと判りませんが」
「ぜひそれをお譲りください。毒にはならない筈ですから
患者さんの承諾を得て試してみます」
「それならばどうぞ。結果が出ましたら商業ギルドさんにお伝えしておいて下さい。次ぎ来た時にでも確認しますので」
「おお、有り難い。感謝します」
その後、アカヒ医師さんとの話が弾み、風邪薬とか痛み止めとか
二日酔いの薬とか、色々取り出してアカヒ医院で試してみて
頂くことになりました。
商業ギルドではジューサーや濾過に使った器具や濾紙に
興味を持って譲ってほしいと懇願されました。
収納の機能に複製が有ったのを思い出して取りあえず10
セット複製してお譲り致しました。
カセットコンロは冒険者ギルドも興味を示して
どちらのギルドにも10個、カセットボンベは100個ずつ
お譲り致しました。
肝心のポーションは
上級ポーションが売値で50万デン。卸値で35万デン
中級ポーションが売値で10万デン。卸値で7万デン
初級ポーションが売値で1万デン。卸値で7千デン
それよりも効果の薄い超初級ポーションを商業ギルドで
初級ポーションを聖水で薄めて作りたいので、私からは
聖水を買いたいと言ってきました。超初級ポーションは
売値で1千デン
聖水は18リットルで、1万3千デンで成立しました。
なぜ18リットルなのか?それは、私が断水時の常備用に
18りットルのポリタンクを買っておいたのが有ったので
それを有効利用したわけです。
「聖女様とか神殿とかの方は大丈夫なのですか?」
後でもめ事に巻き込まれたくないので念を押してみました。
「なあに神殿では治癒魔法を施すのに、今言った価格の
10倍のお布施を要求するので、庶民は利用できないのですよ
安くポーションが出回れば庶民の命が助かるのですから
販売禁止させようとしても我々が、一般庶民が許しません。
その前に神様がお許しにならないでしょう」
「王宮魔導士としても、神殿の横暴は許しませんぞ
国王陛下にもそのようにお伝えしておきます」
「文句が有るならフアースト迷宮の仙女様のユイ様に言えと
言っておきましょう。今現在、フアースト迷宮まで、辿り着
ける剛の者等、この国には居ないからなあ」
と言った人は冒険者ギルマスのトラッドさんでした。
「私が仙女ですか?」
「そうです。これほどのポーションを作れて
稀有な強大な魔物を討伐出来て、この様な便利な魔道具を
作れるお人は仙人ならぬ仙女に違い有りません」
「【フアースト迷宮】内に住んでいる時点で仙女の証です」
とうとう仙女と言うことにされてしまいました。
魔道具なんて作ってもいないのに……。
※※※※※※※※※※※※※※
今回は少し長くなってしまいました。次回はもう少し短く
纏めたいです。
変な所で改行されるので、スマホやタブレットでは読みにくいとのご指摘がありましたので、パソコンで下書きしていたので
スマホで確認してから投稿してみました。いかがでしょうか?
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