薄明光 後篇
少年達の瞳に映るのは、宗教画の
それは、光。
彼らが生まれてこのかた、経験したこともないような自然光。
そんな〝
安らかな光、そして清らかな光。
そんな形容語句の数々も、三人はまだ学んでいなかった。
ゆえに〝超ヤバくて、すげえレベルでビビった〟感じの、光。
「なんか……自然も強いな。やるじゃん、大自然」
ボスの唇から思わず口をついて出た言葉にトモとタケちゃんは力強く
平成の
季節が
そこにはただ、光を見つめる瞳と、光を感じる心があるのみ。
「すっげえの見たな! 最高だった!」
タケちゃんの声を聞き、ボスは嬉しい気持ちになる。楽しみだった屋上には怪物や宇宙人の姿など見当たらない。それでも期待した以上の光景を目にすることができた。探し求めていた〝何か〟を小さな町の中で見つけた少年達は「世界は楽しい」「自然や現実も侮れない」と再認識し互いに言葉を交わす。
「こら、お前ら……何してる!」
三人が通う〝二組〟の隣のクラス、一組の担任を務める大沼教諭の
「やべえ、逃げろ!」
少年達は
「いきなり電話かかってきたと思ったら、なんでこんなことしたの!」
教職員達に
「何となく楽しそうだから、入りたくなった」
それ以上に価値の高い理由などなく、自身を突き動かす目的など他にあろうはずもない。何を当たり前のことを
「お前らごめんな、大声出して怖かったよな」
でも先生もびっくりしたからお互い様だ、と大沼教諭は
「でも光すごかった!」
タケちゃんが叫び、トモが笑い、三人はコツンと頭を叩かれる。
*
月日は流れ、あの日ボスだった少年は作家になり文字を紡いでいた。
彼は成人しても変わらず〝トモ〟と呼ぶ友人の愛称と、当時のまま〝タケちゃん〟として接する友人の苗字に含まれる〝フジ〟の文字を一文字ずつ
「何となく楽しそうだから、書きたくなった」
それ以上に価値の高い理由などなく、自身を突き動かす目的など今のところ、それ以外には存在しない。
しかし当時の体験を振り返ることで心境に変化も生まれた。
「人に迷惑かけたり心配されるようなものは書きたくないな」
苦い罪悪感は静かな自制心や決意に変わり、薄明光線の眩しい満足感は確かな探求心の
その作家は何かを受け取ることで充実感を得るだけではなく、何かを生み出し達成感を〝作る〟行為に命の意味を見出した。
トモフジテツは
世界は、文字は、カクヨムは、きっと〝光〟に満ちている。
<了>
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