14-4 差し替え前 原文
上空。
地上。
俺と
通信機に響く空からの声。
『わ! わ! すっごいの来てます葵さん!』
『飛ぶのに集中して! 私が減らす!』
沙苗は
「二人とも、なるべく逃げてくれ!」
「奴にダメージ通らないっす!」
カルロ、
『葵さんが落としきれなくても避けきってみせます!』
『範囲拡散……風ッッッ薙ぎッッッッ!』
「諦めるな沙苗! 少しでも奴の「型」を崩せ!」
「カナヤさん、了解っす!」
佐原が弾を迎撃、しかし……数が多すぎる!
それに、沙苗の
『今から、めーーーっちゃ速度上げますね葵さん!』
『わかった! 私に構わないで! 全力で!』
「まだか沙苗ッ!」
「小型分身体を
谷丸と佐原に集中放火が着弾するのも時間の問題だ!
いや、通信で聞こえた上空の声。
何か策があるのか!?
『振り落とされないでください! 行っきますよ!』
『思いっっっきり! 飛んで! 谷丸ちゃん!』
「自衛官歩兵、聞こえるか!?頼む!奴の指一本でも飛ばせればいい!」
一瞬だけ隣を見ると、無言の沙苗が能力の使い過ぎで鼻血を流していた。
カルロの背部は変わらない。大量生産。
あまりにも、あまりにも多くの
対する谷丸の軌道、あれは……そんな、まさか!?
まさか!
板 野 サ ー カ ス 飛 行 だ !
谷丸のアレは〝板野サーカス〟と呼ばれる飛び方・ミサイル回避方法だ!
急上昇、急旋回、急加速、急制動、再加速、急降下!
滑空、再々加速、垂直上昇、最大速力、曲技飛行!
ジグザグ航法、緩急、回転、切り返し、減速を使ったフェイント、持ちうる全てを駆使して全弾回避!
しかも追跡誘導弾の動きを
アイツ、いつの間にあんな技術を!
『ざぁこ! ざーーこ! そんなの当たりませーん!』
『イキらないで谷丸ちゃん! 左からも来てるッ!』
一般的に、かの有名な「まだ舞える」という可能動詞が使われる状況は、実は「もう舞えない」パターンがほとんどだ。
でも、今の谷丸は違う!
文字通り……まだ、舞えるッ!
『葵……さん……生きてますぅ?』
『かな……り……ギリギリ!』
風圧と衝撃で通信の音声が乱れているのが分かる!
この飛行手段は常軌を逸脱した負荷をもたらす!
耐えろ! 舞え! 板野サーカス!
以前、何気なく調べて正式名称を知った!!
板野サーカスとスマホで検索すればすぐに動画が出る!!!
世界に示す頂点の
だが、そんな谷丸飛行も長くは保たない!
耐えてくれッ!
俺も通信機の音声を聞きながら、陸上自衛隊に借りた八十九式小銃をカルロに連射する!
ひたすら、撃ち込め!
*
「
『金谷管理官、マルサン! 着弾を確認! オクレ!』
「感謝する! 畳みかけろ!」
「ミサイルっぽいの、全部消えたっす!」
俺達のそばに着陸する佐原と谷丸。
沙苗は絶え間なく
「よーっし、もう休んだ大丈夫! 行きますっ!」
「私も! 今は風薙ぎよりも……拳で!」
マジかよ!?
どんな体力してんだこの二人!
『金谷管理官、頼まれた物を持ってきました!』
「山下君!」
谷丸と佐原による断続的な肉弾格闘攻撃!
山下君が横付けしたワゴン車から降ろされる箱、箱、箱、箱、箱!!
それ単体では武器として成立しない。
箱の中には大量に並ぶ、
「よく狙え沙苗、谷丸と佐原が離れる瞬間!」
「サナっち! 名前はアレを! 大声で!」
「私は! 当たっても! 治るから! 気にせず撃って!」
「おけ! カナっちが考えてくれた技、いくっす!」
おじさん構文の兵部サナフィーヌ、叫ぶ!
「
谷丸と佐原が回避!
「沙苗! 連続発射だ! 俺も援護するッ!」
「くぅ〜〜! っぱドイツ語ドイツ語ぉ!」
「谷丸ちゃん騒がないの!」
「連射! なら! もう! 技名! いちいち! 叫ぶの! めんどくせっす!」
そんなぁ、と言いながら谷丸はがくりと肩を落とす。
念動力により射出された杭の行方……カルロに……届、かない!
「この私に、子供だましのオモチャなどッ!」
「まーだ終わってないっすよ!」
驚異的な動体視力と反応速度でカルロは全弾回避!
だが、鉛杭も軌道を変え再び奴を狙う!
「
谷丸の新技!
範囲型低温攻撃!
具体的にどの程度温度が下がるのかは分からない!
消耗が激しく多用はできない!
それでも、カルロも生物である以上は低温化で動きに変化が出るはずだ!!
刺さった!!!
刺さりが、甘い!?
しかも融解!?
「わ、アレされるとリサイクルできないっすね!?」
「私もうあんまり保ちません、葵さんは風薙ぎをっ!」
「任せて!」
カルロは肉体の硬質化により貫通を防ぎ、おそらく一時的な超高温化を使って
「同じ手は食らわんぞ」
*
「謙一先輩!
「風薙ぎも効果が薄い、私は接近戦に切り替える!」
「カナヤさん
「カルロ……なぜ動ける!」
「簡単なことだ。冷気を使ってくるのなら、それを最初から弁えて私も高温を維持するだけの話!」
時間と資源とコストの限界、四日かけ数百本用意した
「煉獄と焦熱の力を備えし我が眷属よ、屠れ!」
奴が右手から放つコウモリ。
いちいち気取った口調やワードチョイスにイライラする!
コウモリが佐原に向かって一直線に飛び……爆発!!
「カナヤ君、これガチでヤバイ! 気を付けて!」
無機物や「爆弾」への再変換を挟まず、コウモリ形態のままダイレクトに起爆!
佐原の腕一本を吹き飛ばず威力!
これが血族……超越上位種の真の力!!
失った腕を高速修復し距離をとる佐原!
無線から自衛官歩兵分隊の叫び声!
『…………マル、マルサン、動体補足。オクレ』
『マルサン、マルマル、目標は一の橋西、小型飛翔体!各個に撃て!』
『マルマル、マルヒト、飛翔体接近!飛翔体急接近!負傷者発生!オクレ』
『マルマル、こちら、こちらマルロク!マルナナマルハチ負傷目の前に飛翔体急接近、急接近、群れ!』
「こちら金谷、普通科歩兵は退避!」
『了解!退避!三角台に
動きが鈍った対象を沙苗が
俺は山下君や分隊と連携をとりながら箱の鉛杭を沙苗に手渡す!
広く戦況を観測し、機をうかがう!!
佐原がコウモリを風薙ぎで掃討、沙苗が駆逐ではなくカルロ本体に杭発射と切り替える
ケリー達から学んだ戦法!!
「
カルロ公爵が、楽団指揮者のように両腕を広げた。
「何か仕掛けてくる、佐原は谷丸と合流!」
「了解!」
「葵さん、いつでも飛べます!」
「アタシはカナヤさんのとこっすね!」
カルロ公爵が振り上げた両腕を、降ろす。
「この体全てを死の運び手とし、
今までの比にならない。
見たこともない、おびただしい量。
無数の……コウモリ!
「谷丸と佐原は空へ!」
「飛びます! サナっち上手くやってくださいね!」
「了解! カナヤ君とサナちゃんは……気をつけて!」
「アレやるんすね!?行くっすよカナヤさん!!」
二人は空高く舞い、迫る群れを回避。
俺と沙苗は、橋の中央手すりから河川へ飛び降りる!
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