第三話 ムクロアツメ(後編)
あからさまに、妖怪だ。
資料写真の見た目はレトロゲームのボスに似てたな。
二台目の飛空艇ゲットする時の魔物。
でも最初の目撃例や行動を踏まえると、俺の知ってるタイプの奴である可能性が高い。
持っててよかった、前世の知識。
「やっぱり来やがった」
「うむ」
市内で最も広い霊安室を持つ大型病院。
ここへ、機関に収容されている人型や亜人の亡骸を搬入し遺体をさらに増やす。
ビンゴだ。
「小さな骨……かよちゃん、頼む!」
「脆き者共よ、
座敷童の現実改変能力は、物質の修復と小型動物・低級アノマリーの滅却に絶大な力を誇る。
人間や高ランク収容物にこそ効かないが、対象が虫やトカゲなら何匹いようと一瞬で存在自体をなかったことにできる!
三百年前から生きる大先輩だ!
「谷丸!奴が病院から逃走!見えるか!?」
『見えまーす!サナっちと追いかけますね!』
「おぬしも早うバイクを出せい、謙一!」
『カナヤさん、川沿いを南下してるっす!』
通信機から谷丸、沙苗の声が聞こえてきた。
後は……
『カナヤ君、国道とトンネル南出口の封鎖完了!』
「佐原! 今頼もうと思ってた、助かる!」
「はよせい謙一!」
ハーフツインを揺らす地雷ファッションに急かされ、駐車場へ向かう!
*
もう五分も走らず、トンネル!
耳元の端末から……通信!
『謙一先輩、どうします?』
『アタシ達は出口に回った方いいすよね?』
「谷丸、まだ飛べるか?」
『全っっ然、余裕ですよ!』
『カナっち飛行速度も距離も、ほんと伸びたっすよね』
「沙苗は火の準備を!」
『サナっちも念動力以外にいっぱい、技増えましたよね!』
『了解っす!範囲は?』
「二点!狭範囲集中型で構築!」
「退屈じゃ。わっちにも耳のそれ、貸せい謙一」
「かよちゃんステイ!ハウス!」
座敷童は、認識災害とキネト災害を無効化する。
そしてキネト
「来るぞ謙一、右じゃ!」
「おう!」
「次は正面!」
トンネル内部の側壁、路面が次々に凍結!!!
「佐原ぁ!お前から見て一番右の車線だ!!」
『了解!!』
前世で言うところの「鬼」の血を引く佐原葵!
継承された超常膂力がムクロアツメを抑え込む!!!
「葵!上の奴が鞭を振っとるぞ!避けい!!」
「かよさん、私は大丈夫!」
吹き飛ぶ佐原の右腕。そして、即時修復!
鬼の特性……自己治癒能力!!
『サナっち、狙い定まりそうですー?』
『ばーっちりっすよカナっち!カナヤさん、どこ撃つっすか?』
「沙苗、二つの車輪の周りを頼む!」
遠目に、上空に見える翼と金髪。
谷丸夏奈は「竜」の特性を持ち自由に空を舞う。
両腕で抱えるは黒セーラー服の沙苗。
足が遅く持久力もない虚弱体質。
だが!
念動力を駆使した高火力の固定砲台!!
「カナヤ君、持ちこたえるのそろそろキツいかも」
「ふんばれ佐原! 沙苗……
『了――――解っす!!』
記録写真や報告資料からの情報。
奴は車輪の回転を動力にしている。
荷車を引くデカブツは飾り、間違いない。
地に足をつけず浮遊状態で佐原と張り合う大型の骸骨。
どういう原理なのか、車輪を包み燃え盛る炎が運動エネルギーの根源。
そして、炎は物理現象である可能性が高い!
院内、路面、通過した軌道に残る小さな火!!
湾岸戦争時、イラク軍が油田に火を放つ。
炎上させられた油田を鎮圧するため、米国が実際に用いた手法。
ダイナマイトをぶち込む、爆破消火。
「まだまだいけ、沙苗!周囲の空間だ!」
それと同じ原理!
燃焼を阻害、封殺しろ!!
「カナヤ君!やっぱり止まった!!」
『上手くいきましたね謙一先輩!』
『あ、でもまたちょっとずつ燃えはじめてるっすよ!』
「十分だ!」
物質が燃えるには酸素を必要とする!
車輪の周りを一気に沙苗が燃やし尽くす!!
結果、酸欠により焔の車輪は熱を失う!!!
「高速移動が止まればこっちのもんだ」
「夏奈!葵を避難させい!謙一が斬るぞ!」
『確かに!かよちゃんの言うとおりですね!』
『アタシ降りとくっすか!?』
「谷丸ちゃんなら抱えてくれる!大丈夫!」
立ち往生するムクロアツメ!
滑空した谷丸は佐原を回収し、再び飛翔!!
俺は短刀を抜く!!!
本来は鞘に収まるはずのない長尺の刃渡り!!!!
光子の……刀身!!!!!
「応えろ、村雨!!!!!」
煌刃、一閃。
ムクロアツメ、またの名を妖怪火車。
光の粒子となり散っていった。
無効化、完了!!
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